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住宅地にひっそりと佇むイタリアン「自家製生パスタのお店 Giglio(ジリオ)」人気の理由をインタビューしました。 その1

こんにちは。
珈琲きゃろっとの大石です。僕の趣味は美味しいお店巡り。はっきり自覚している「食道楽」です(笑)

そんな食道楽な僕から見た、 美味しいお店で働く方の想いや、美味しさの秘密等々を インタビュー形式で紹介していきたいな、と思っています。

「え!?きゃろっとの話じゃないの?」とお思いになった皆さま…。その通りです。スミマセン…!

ただ、きゃろっと以外のお店の話を聞くことで、自店の考えが明確になっていくことを インタビューを通じて実感しました。

ときどきですが、コーヒーのお話もちゃんとしてます(笑)

美味しい料理とコーヒーの相性や、各ジャンルのプロから見たコーヒーについて、など 新しい切り口で「コーヒーの楽しみ方」をお伝えできたら…と思っています。

さて第1回目となる、今回は 「自家製生パスタのお店 Giglio(ジリオ)」さんの青木シェフにお話を伺いました。 ※インタビュー日…2021年4月15日

どうかお付き合い下さい。

『その時に一番美味しいものを、自分にできる一番美味しい方法で提供する。それがイタリアンだと思ってます』8割のお客さまがリピーターの人気店、ジリオの料理に込める想い

もちもちっとした生パスタ。
地物の食材にこだわった、素材を活かしたソース。

季節によって変わるメニューで、来る人の心をつかみ続ける青木シェフ。実は僕と同い年なんですが、若々しく爽やかな印象が眩しいです(笑)

僕個人的には、生パスタはもちろん、くちどけが良くてとろけるような食感と、まろやかなソースが秀逸なニョッキ。ミミはパリッと、そして生地はしっとりモチモチのピザ。この2つも大好きです。初めて食べた時は、美味しさに愕然としました…。

そんな美味しい料理がいっぱいの ジリオさんのある場所は、札幌市清田区里塚の閑静な住宅地の中。初めて行く際はカーナビや地図での下調べをオススメするくらい、住宅街の中にそっと佇んでいます。大きい通りから中道を進んでいくと、パタパタとイタリアの国旗が揺れているのが目印です。

清潔感があり 窓から入る光が心地良い店内。青木さんご夫妻の柔らかな人柄がアットホームな雰囲気を生み出して、ついつい長居したくなる落ち着いた雰囲気が溢れています。

さて、そんな「自家製生パスタのお店 Giglio(ジリオ)」さん。

その人気の秘密と 料理に込める想いを聞いていきましょう。

— それでは、今日はよろしくお願いします。

早速ですが、札幌の中心部ではなく、この場所でお店を始めた理由はありますか?

はい。元々は、ここの場所に「ドッグカフェ」があったんですね。

そこは妻のお母さんが営業していました。僕もそのドッグカフェで働いていたんですが、親の世代が引退するってなって。じゃあ今後どうする?っていうことになりまして。「僕の料理を提供する場所にしたい!」っていう考えで今の形になっていきました。

料理は子供の頃から好きで、大人になったら料理人になりたいって、ずっと思ってたんですね。

きっかけはババロアだったかな。作って食べてもらった時にすごく喜んでくれたんです。目立ちたがりの性格もあって、喜んでもらうことが強烈に嬉しくて。

そこからですね。料理でやっていきたいって思ったのは。だから大学在学中から料理の出来るアルバイトに行ってました。 正直、学校よりもアルバイトの方が力が入ってましたね(笑)少しずつ美味しいものを作れるようになる感じがたまらなく楽しくて。

その後、いろんなお店で修行させてもらって、お金を貯めて…を繰り返してている中で (当時は結婚前でしたが)妻のお母さんのドックカフェで働きはじめたんです。

そこで、さっきの話になるんですが、自分たちのお店としてやっていくなら、 もっと自分らしいことをしたと考えました。僕が自信を持って出せる料理。自分にしかできない料理。そんなお店にしたいと思って、仕事を掛け持ちしながら修行を続けました。

— 人気のあったドッグカフェをそのまま引き継ぐのではなく、自分たちの料理店にする 「方向転換」は勇気がいるように思いますが?

言われてみればそうですね(笑)

理由としては、ドッグカフェは犬について詳しくて、 尚且つ犬を飼う人の気持ちになれる人が居ないと絶対に成り立たないということがあります。

それと、やっぱり自分の夢ですよね。自分の思う味、自分の料理を提供したい。そういう想いがあって、妻とじっくり相談して決めました。そこから日々、いろいろと調べたり、食べ歩いたり…。そこで「絶対ここで修業したい!」という味に出会ったのが「オステリア ジリオ」でした。

そこで、頼み込んで修行をさせてもらって。厳しいお店ではありましたが、僕自身大きく成長できたと思ってます。手取り足取り教えてくれるようなことは全然無かったので(笑)シェフの料理を横で見ながら、そっとソースの味を確認したりしていました。今思い返しても、本当に勉強させてもらいましたね。

その後は、オステリア ジリオのシェフのつてで「バンケット」でも修行させてもらいました。

— オステリア ジリオはイタリアンの伝説的な人気店。バンケットはフレンチでミシュランの星を獲得した名店ですね。

そうですね。

ミシュランの星を獲得したお店や、人気のお店で経験を詰めたというのは、やっぱり自信に繋がっています。

料理の技術的な部分はもちろんですが、もっと基本的なこと。心構えに近い部分も多く学びました。
当たり前のことをしっかりやる。一つひとつのことを、手を抜かない。1つ終わったら次のことをやる。ごく当たり前なことですよね。けど、改めてそれが大事なんです。

今考えても、この2つのお店での修業は僕にとって、掛け替えのない経験ですね。だからこそ、イタリアンとフレンチ、違うところはいっぱいありますが、それらの良いところを 今の自分の料理に取り入れるように心がけています。

最近は様々な国の料理を合わせて提供する料理店も多いですよね。僕もそういったことに新しい可能性を感じています。ただ、共通しているのは、やっぱりベースになる味。その大切さ。そこに絶対に妥協しないことですね。

日本料理でいうと「だし」でしょうか。 そこは絶対手を抜かないし、付きっきりで手作りします。ストイックな感じで言っていますが、単純に僕はその時間が大好きなんですよ。一つひとつの食材が混然一体となっていって、ブロードやフォン、ブイヨンができていく感じ。自分が「料理を大好きなんだ」って実感できる瞬間でもあります。

タイミング1つで味が変わる繊細な工程です。けど、 そこにこそご自宅の料理とお店の料理の違いがあるんじゃないかと思って こだわりを持って作っています。

— 名店での修行の末、自家製生パスタの店としてスタートしていくことになるんですね。

そうですね。
難しく感じるかもしれませんが、 生パスタは小麦粉と卵と塩、オリーブオイルで誰にでも作ることができます。

けど、自分が追い求める生パスタとなると難しくなってきます。

例えば、食感。それから鼻から抜ける小麦の香りはどうか、ということですね。具体的に説明すると、まず、どのくらいモチモチしていて、噛んだ時の歯切れはどのくらいが良いのか。また、ソースと絡めたときに小麦の香りがどのくらい残るのか。それが自分のソースとどう重なるのか。そんなことを事細かに膨らませていって、自分の中の「理想の生パスタ」を想像していました。そして、それを実現するための試行錯誤は2年続きましたね。

試作を繰り返す中で、小麦粉は北海道産が良くて。じゃあ どのくらい、どんなふうに混ぜるのか。混ぜる時の工程、加水のタイミング、水分の比率、使う道具は何が良いのか。真空機を導入したり、本当に何度も何度も繰り返し実験して、自分の思う食感、香りを出すことができました。

理想の生パスタが作れた時は、 いやぁ…、本当もう、うれしかったですね!

合わせるソースは、できる限り旬の地物を取り入れて作っています。実は、いつもソースの味から先に決めています。旬の味をどんな風に楽しむか。そこを軸にします。

そして、そのソースにどのタイプのパスタを加えるのが良いのかを決めます。ラビオリが良いのか、ペンネが良いのか。最後に皿に乗せたときの色合いまで決めて、 その日のメニューとしてお出ししています。

— 理想の生パスタを追求する姿勢は、きゃろっとのコーヒーに対する探求心に似ている気がします。
コーヒーの焙煎はやってみようと思ったら 誰にでもフライパンでできる。けど、理想とする香味を追求することで、独自の味わいを生み出すオリジナルの焙煎になる。内倉がトライ&エラーの繰り返しで焙煎データを構築した話を思い出しました。

さて、ジリオさんの特徴的なこととして、お店に定番のメニューがないことがあると思います。それはどうしてでしょうか?

そうですね。

メニューは基本、日替わりで決めているんです。その時に一番美味しいものを、どういう料理で食べてもらうか。それを毎日続けていたら、定番のメニューではなくて、毎日の日替わりメニューになったというイメージです。

気まぐれとも言えますが、季節で食材が移り変わりますので、定番を作るよりも自由で良いんですよね。

地元の食材にこだわるのは、僕がイタリアに短期滞在していた時に感じたことが大きいように思います。単純なことなんですが「その時に旬のもの。その時が 美味しいもの。それを1番美味しい方法で食べる。」 僕が良いなぁと思うお店は、そういう考えのお店ばかりだったんですね。

僕にはその手法が「イタリアン」なんですよね。 それは僕が一番美味しく作れる調理方法だから。今美味しい旬のものを、1番美味しい方法で提供することが、結果、お客様に最も喜んでもらえると単純に思ってるんです。

— なるほど…納得です!すごく よくわかりました。だからこそ、青木シェフのお料理には沢山のファンがいらっしゃるんですね。
では、青木シェフがこの先やっていきたいことや今後の展望などはありますか?

色々とやってみたいことばっかりあって、体が足りないです(笑)

パッと思いつくのは、ビーガン料理でしょうか。
自分自身実がアレルギー体質ということもあって、 そういう視点から できるだけ食材にはこだわって調理をしています。 あとは自分で畑をやって、育てた野菜を使ったりもしたいですね。まさに季節の野菜を、自分で育てて料理にできる感じです。

ただ、今は来ていただいたお客様に、できる限りご満足してもらえるように。本当にその一心ですね。

さっきお話しした、やっていきたいことは、すぐにではなくても、ゆっくり進んでいけるようにと思っています。

— イタリアンとコーヒー。道こそ違いますが、話の色々な場面で、ジリオさんときゃろっとに共通した考え方やこだわりを見ることができました。
そして何より、ジリオさんの料理が美味しい理由が ちょっと見えたような。そんな気がしています。

次の記事では、イタリアンのシェフから見たコーヒーについてお話を伺っています。

どうぞお楽しみに。

「自家製生パスタのお店 Giglio(ジリオ)」インタビュー その2 イタリアンのシェフから見たコーヒーって?

 自家製生パスタのお店 Giglio 
〒004-0805 北海道札幌市清田区10 里塚緑ヶ丘11丁目10-33
電話: 011-838-8626
大石 広土

この記事を書いた人 
こんにちは!珈琲きゃろっとの大石です。
毎日、お客様対応や焙煎業務など色んな事に携わっております。楽しいです^^
嬉しい言葉や、美味しい!のご感想をみては、「幸せな仕事がきてうれしいなぁ~」と実感してます。

そして、我が家のエンゲル係数異常値ですが、食道楽はやめられません(笑)
食道楽が高じて「どんな人が、どんなふうに作ってるんだろう」という興味を抑えきれず、素人ながら、家族で突撃インタビューをしています。完全に趣味です(笑)

美味しいコーヒーと同じくらい、この世の美味しいものが好き。もう、この気持ちに素直に生きています(笑)

コーヒーのこと、お客様やサービスのこと、きゃろっとのこと、食道楽のこと(笑)など色んな角度から魅力再発見するお手伝いができたら嬉しいです。

もし良かったら、コーヒーと一緒にお付き合い下さい。