コーヒー豆を冷凍保存するメリットは、以前の記事でもご紹介していた通り…
- 酸化を防ぐことができる
- 香りの持ちがいい
- 味の劣化が少ない
- 膨らみも長く続く
ですね!
▼過去の記事 「冷凍保存したコーヒー豆は、常温に戻す?戻さない」は、こちら
まさに、いいこと尽くしです。
なので、お客さまから保存方法のご質問をいただいた際には、1か月以内にお召し上がりいただいている場合は常温保存。
そして、1か月以上掛かってしまう場合は、冷凍保存をしていただくようにご案内をしています。
でも、常温保存で1ヶ月保存すると、どうしても徐々に香りが落ちて行ってしまい、膨らみも弱くなります。なので、飲み切るのに1か月以上かかる場合もかからない場合も、冷凍保存していただいた方が本当はおススメなんです。
じゃあ、なんで常温保存もおススメしているのか?
それは、冷凍保存にも、少なからずデメリットが存在するからです。
今回は、冷凍保存した時のデメリットの部分に着目して、ご紹介していきますね!
冷凍保存によるデメリット【その1】結露による酸化
コーヒーを冷凍保存した際の、最大にして最強の敵は「結露」です。
冷凍保存してキンキンに冷えたコーヒー豆を室内に出すと、袋の表面が白っぽくなりますよね。
さらに、袋から豆を取り出すと、豆の表面も同じようになります。
これが「結露」です。
袋やコーヒー豆に触れた空気が、急激に冷えることで、飽和水蒸気量が減り、水滴となって表れるんですね。
コーヒーに発生すると…
この現象は、身近な場所でもよく見かけることができます。
例えば、冬場にメガネを掛けた人が、外から帰ってくるとメガネが真っ白に曇りますよね。
夏場に自動販売機などで缶ジュースを買った時、缶の表面に汗のように水滴が付くことがあります。
この現象がコーヒー豆に起き、発生した水滴がコーヒーの付着することで、味の劣化を進めてしまいます。
冷凍庫との温度差が大きい春~秋にかけては、気温差が大きくなり、コーヒー豆により大きな影響を与えてしまうんですね。
せっかく新鮮な状態を維持するために冷凍保存しても、結露させてしまったら元も子もありません。
これを防ぐ方法として、使用する分を取り出したら、すぐに冷凍庫に戻すようにお伝えしております。
では、結露がどのくらいの味に変化を与えてしまうのか?
きゃろっと的に、検証してみました。
検証方法
同じ日に焙煎した「グアテマラ・グアヤボ農園中深煎り」を豆のままで100g、3袋用意します。
保存方法の条件は、下記の通り。
■実験期間 2021年4月1日~4月30日
■室温 20~24℃
■湿度 35~40%
■比較保存したコーヒー豆
①常温保存
②冷凍保存(結露をできるだけ防ぐ)
③冷凍保存(結露させてしまう)
②の冷凍保存では、「使用する分だけを取り出してすぐに戻す」に近い状態を再現するため、冷凍庫から出して、30秒間袋を開けておき、冷凍庫に戻します。
一方、③の冷凍保存では、あえて結露を発生させるため、 冷凍庫から出して、5分間袋を開けておき、冷凍庫に戻します。
そして、この取り出す作業を、朝と夕方の2回行い、経過日数毎に飲み比べを行いました。
10日経過後の飲み比べ結果
最初に現れた違いは、お湯を注いだ時の膨らみです。
常温保存の豆も膨らんでいないことはないけど、冷凍保存した豆は、まるで焙煎したての膨らみそのもの!
次に飲み比べをしてみて、スコア化もしてみました。
スコアは、酸味、口当たり、カップのクリーンさで各項目5点満点。
心地良い酸味があれば、5点。酸化した酸味や強い酸味、酸味が弱くなった場合には減点します。
口当たりは、心地良さを感じたら5点。カップのクリーンさは、雑味感じないほど、5点満点に近くなります。
①常温保存
- 酸味の心地良さ :4
- 口当たりの心地良さ:5
- クリーンさ:5
②冷凍保存(結露をできるだけ防ぐ)
- 酸味の心地良さ :5
- 口当たりの心地良さ:4
- クリーンさ:5
③冷凍保存(結露させてしまう)
- 酸味の心地良さ:3
- 口当たりの心地良さ:4
- クリーンさ:4.5
飲み比べをしなければ、その違いは分からないほど、どの条件のコーヒーも美味しいですよ~。
①のコーヒーは、焙煎したての時に感じたフレッシュな酸味が徐々に落ち着いてきて、よりまろやかになりました。
ただ、③のコーヒーだけは、冷めてきてからの酸味やクリーンさが、やや落ちてしまう印象でした。
20日経過後の飲み比べ結果
見比べてみたら、わかるでしょうか?
20日経過すると、常温保存のコーヒー豆の表面には、うっすらとコーヒーオイルが浮き出てきているのが見えますね。冷凍保存の豆は、見た目には変化なしです。
この見た目の違いが、どう味に影響してくるのでしょうか。
早速味覚スコアから見てみましょう!
①常温保存
- 酸味の心地良さ:4
- 口当たりの心地良さ:5
- クリーンさ:4
②冷凍保存(結露をできるだけ防ぐ)
- 酸味の心地良さ:5
- 口当たりの心地良さ:4
- クリーンさ:5
③冷凍保存(結露させてしまう)
- 酸味の心地良さ:3
- 口当たりの心地良さ:3.5
- クリーンさ:3.5
10日経過で見られなかった差も、20日を経過すると、味覚にも徐々に表れれるようになってきました!
①のコーヒーは、いい意味で飲みやすく、酸味の角がとれて、口当たりに心地良さを感じます。お湯を注いだ時の膨らみこそ、弱くなってきますが、美味しいコーヒーを淹れることができます。
②のコーヒーでは、焙煎したての、10日経過と比べても、ほぼ変化なし!
そして③のコーヒーは、わずかに味の劣化を感じるようになってしまいました。コーヒーが冷めてくるにつれて、収斂性のある酸味やクリーンさが下がってきました。
30日経過後の飲み比べ結果
最後の飲み比べ結果です!
まず、淹れた際の膨らみは、20日経過後とほとんど変わりませんでした。
①のコーヒーは、膨らみこそ弱いですが、挽き立てなので、ある程度膨らんだかなといった印象。
②、③のコーヒーは、焙煎したてのコーヒーのようにモコモコとよく膨らみます。焙煎してから時間が経ってしまっていても、冷凍保存することで炭酸ガスが抜けることを抑えることができます!
常温と冷凍の膨らみの違いは、過去にも比較実験を行っていましたね。
▼過去の記事 「『常温 or 冷凍 』 保存方法による膨らみと味の違いとは…!?」は、こちら
それでは、肝心の味覚スコアは、これまでと何か変化があるのでしょうか!?
①常温保存
- 酸味の心地良さ:3.5
- 口当たりの心地良さ:5
- クリーンさ:4
②冷凍保存(結露をできるだけ防ぐ)
- 酸味の心地良さ:4
- 口当たりの心地良さ:4
- クリーンさ:4
③冷凍保存(結露させてしまう)
- 酸味の心地良さ:2.5
- 口当たりの心地良さ:3
- クリーンさ:3
①のコーヒーは、さらに酸味は穏やかに、口当たりはまろやかに、そして飲みやすくなりました。酸味の強さはなくなったので、スコアを下げましたが、質感にマイナス要素は全く感じません。
②のコーヒーは、やはり変化なし!冷凍保存をきちんと管理すると、いつまでも焙煎したてのコーヒーをお楽しみいただくことができるんですね!自信を持って、冷凍保存をおすすめすることができます。
最後に、③のコーヒーです。20日後のから大きな劣化はありませんが、酸化が由来と考えられる嫌な酸味やザラツキが感じられます。冷凍保存した豆を結露させてしまうこと。これが、冷凍保存の大きな唯一のデメリットと言えますね。
冷凍保存によるデメリット【その2】忘れちゃう…
ぼくの家では、毎日コーヒーを淹れるので、1か月で3袋(約600g)のコーヒーを飲み切ってしまいます。
1か月以内に飲み切ることはできますが、冷凍保存をしてコーヒーを保管します。
そこで困ってしまうのが、他の食材と一緒に保存しているので、どんどん埋もれていってしまうこと…
「あれ?あのコーヒーどこだっけ?」ってなることがよくあります。
さらに、僕は料理をしないので、余計に冷蔵庫事情も把握しておらず、冷蔵庫は複雑な迷路です。
すると、ひょこっりいつかのコーヒーが、出てくる時があるんですよね~
そんな時も、冷凍保存なので品質は維持されたまま。全く問題なしです。
まとめ
この2つのデメリットを考慮しても、長くおいしい状態を維持できる冷凍保存。
③冷凍保存のコーヒー豆は、結露させてしまったことで、明らかに味に悪影響を与えることが分かりました。
冷凍保存する際は、結露だけはなるべくさせないように保存し、少しでも長い間、コーヒー豆の新鮮な酸味をお楽しみいただければと思います。冷凍庫から出して30秒と5分では、全く劣化スピードが違うので、すぐに冷凍庫から出して戻すということが、最も大切となります。
ちょっと、話は変わりますが、お客様に「真夏にクール便で送ってほしい」と声をいただくことがありますが、結露のリスクからお断りしていました。
しかし、今回の実験で、やはり結露のコーヒーへ与える品質の影響は大きいことが分かりました。
当店出荷から、クール便での流通経路を考えると、真夏の野外の高温多湿では、明らかにリスクが高く、お客様の手元に届いてからも、常温保管はできなくなってしまいます。そのため、今後もクールでの配送は、品質劣化の影響が出る恐れがあるため、当店では承りません。
また、今回は味覚だけでなく、注いだ時の膨らみにも、見た目にはっきりわかるような違いが出ましたね。
同じようによく膨らんだ ②冷凍保存 と③冷凍保存 のコーヒー豆ですが、③は酸化によって味が劣化してしまいました。
ところが、あまり膨らんでいない①常温保存のコーヒー豆は、フレッシュさはなくなりはしたものの、美味しい状態を維持することができました。
ということは、「 良く膨らむ = 美味しい 」とは必ずしもならないということが判明しましたね!
あくまでも膨らみは、鮮度をはかる目安であって、美味しさを約束するものではないんですね。
ぜひみなさまのコーヒーライフのご参考になれば幸いです。
この記事を書いた人
珈琲きゃろっとの生産管理をしている浅野です。
コーヒー屋だから知っていることやちょっとした豆知識など、みなさまのコーヒータイムにお役立ていただけるような情報をお届けします。
日々のコーヒー実験は、妻のバリスタさーやんと一緒に。仕事場でも自宅でも、いつもコーヒーの話ばかりしているコーヒーオタク夫婦が、きゃろっと的に検証していきます。
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