loadingなう

コーヒーに甘さが浸み込む!?ハニー精製(半水洗式)を深堀り

エルバス マイクロミルにて

近年、急激に精製方法の研究がされ、聞いたことのない名前のものまで耳にすることが多くなりましたね。
 
きゃろっとでは、残念ながら取り扱いがありませんが、最近では発酵(ファーメンテ―ション)方法などが有名なのではないでしょうか。
 
このような精製方法は、主に中米(コスタリカ)を中心に研究が進められ、品質の安定性を高めてきました。
 
国際品評会のカップ・オブ・エクセレンスでも、この精製方法で作られたコーヒーが上位入賞することが多くなり、世界中に知れ渡るようになりました。
 
この精製方法の元になったのが、ハニー精製と呼ばれる果肉のぬめりを残して乾燥する方法です。
 
▼もう一度おさらい!精製方法についてはこちら
いまさら聞けない「コーヒーを精製する」って何?

ハニー精製は、こんな感じ

この方法は、ミューシレージ(果肉のぬめり)が乾燥工程の中で発酵する能力を利用しています。

発酵の力を活用して、『もっと美味しいコーヒーを作りたい』という生産者の方々の日々の研究の成果とも言えますね。
 
今回はこのハニー精製について、深堀りしていきたいと思いますので、ぜひお付き合いくださいね。

ハニー精製といっても、ひとつじゃない!?

ハニー精製の調整方法は、作り手のこだわりに大きく関係します。
 
コスタリカでは、ハニー精製を進めていく上で、ミューシレージの残し具合により呼び名が変わります。
 
果肉の少ない順に、ホワイトハニー(WH)、イエローハニー(YH)、レッドハニー(RH)、ブラックハニー(BH)と主に4種。
 
マイクロミルによっては、さらにオレンジハニーやゴールデンハニーなど、呼び方も様々。
まさに複雑!!

ホワイトハニー(WH)
イエローハニー(YH)

レッドハニー(RH)
ブラックハニー(BH)

今回ご紹介したハニー精製の見本画像は、コスタリカのグラニートス・デ・オルティス マイクロミルに訪問した時に、見せていただいた精製途中のコーヒー豆です。

段階ごとに果肉の付き具合が異なるので、果肉が付いていないものは薄く、逆にたくさん付いているほど色が濃く見えますよね!

また、厄介なことに、果肉の残し具合による呼び方はマイクロミルによって解釈が異なり、同じ呼び方のハニー精製でも、味わいが全く異なることもあるんですよ!
 
例えば、 Aのマイクロミルではミューシレージを約25%除去してイエローハニーとし、Bでは約45%残してイエローハニーとします。

すると、Aのコーヒーはライトボディの明るい酸味が特徴のあるコーヒーになりますが、Bのコーヒーはボディ感のあるコーヒーに仕上がるように、風味の違うコーヒーになります。

作り手の表現したい味を作るため、また彼らがクライアントのリクエストに応えるための味作りの方法として果肉残し具合を変えることが多いのです。

僕がコスタリカに行ったときには、コーヒーチェリーの出来(糖度)や品種、その年の天候までを考慮して決定しているという話を聞きました。

ドン・マヨ マイクロミルのパブロさんは、出来上がったコーヒーを毎年データとして蓄積しています。
 
長年の経験とこれまで作ってきたコーヒーのデータを元に、一番美味しく仕上がる方法を決めているんですね!

単純な考えで、ハニー精製を取り入れるだけではできない高品質なコーヒーは、一朝一夕ではできないことがよくわかります。

ハニー精製の作り方

収穫されたコーヒーチェリーは、精製場に持ち込まれると、果肉を除去する専用の機械(パルパー)に通されます。
 
コーヒー農園の規模やその機械の性能によって、大きさもバラバラ。
 
人の背丈ほどの小さな機械で少量ずつ処理するものや、大規模なものまでたくさんあります。

シン・リミテス マイクロミルにて
グラニートス・デ・オルティス マイクロミルにて

果肉を除去すると、ミューシレージリムーバーと呼ばれる機械へ。
 
内部では、水圧を変えることによって、ミューシレージの除去率を変えることができるんですね。
※使用する機械や作り手によって異なりますので、一般的な作り方となります

シュマバ マイクロミルにて
ミューシレージリムーバーの内部

各マイクロミルによっても異なりますが、ここでは左のようにパルパーとは別になっています。
 
中心部から出る水圧で、ミューシレージを除去します。

今回は省略してしまいますが、この後の乾燥工程もまた、さらに手間の掛かります。
 
その反面、品質や風味を大きく変えることのできるハニー精製は、とっても面白いですよね!

最後に

コスタリカで発展したハニー精製。
 
もともとは、コスタリカのコーヒーが小粒で個性が少なかったからと、産地で聞いたことがあります。
 
コーヒーの風味は栽培している土地の気候環境に大きく影響するので、こればかりは変えようがありませんよね。
 
それでも「高品質なコーヒーを作りたい」と願った、コスタリカの生産者の努力が、ハニー精製の礎を築いてきました。
 
きっと、まじめなコスタリカ人の人柄にも、ハニー精製がピッタリだったんですね。
 
僕は、このハニー精製のまろやかな口当たりと甘みたっぷりなコーヒーが大好きです^^
 
ぜひ、ハニー精製にも注目して、コーヒー選びをしてみてくださいね!

浅野大地
浅野 大地

この記事を書いた人 
珈琲きゃろっとの生産管理をしている浅野です。
コーヒー屋だから知っていることやちょっとした豆知識など、みなさまのコーヒータイムにお役立ていただけるような情報をお届けします。
日々のコーヒー実験は、妻のバリスタさーやんと一緒に。仕事場でも自宅でも、いつもコーヒーの話ばかりしているコーヒーオタク夫婦が、きゃろっと的に検証していきます。

みなさまの「なぜ?」をぜひお聞かせください!

▼コーヒーの疑問・質問、比較実験のリクエストはこちら
珈琲きゃろっとお問い合わせフォーム