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それで「深井商店」と言えるのか。僕らのできることを、僕たちなりに続けていく。クロワッサン専門店 深井商店 インタビュー④

前回は「深井商店」のオリジナリティについて、深く話していただきました。
深井さんと奥様の二人三脚で「深井商店」は作り上げられていることが、すごく良く分かる内容でしたね。

ただ、お店に伺うとすぐにわかるのですが、深井さんと奥様以外にも、テキパキとお仕事をされている方がいらっしゃいます。良く見ると、深井さんにそっくりだったり、奥様にそっくりだったり。今回聞いてわかったのですが、皆さんご家族。深井さんや奥様のご両親がお手伝いに来てくれているようです。

ご家族ならではのコンビネーションや、意志疎通を感じます。

とは言え、家族だったとしても「オリジナリティ」の共有は難しいことと語ってくれました。『「深井商店らしさ」は、何よりも大事なこと。だからこそ共有が難しい』と。

今回はその辺りのお話から、詳しく伺っていきたいと思います。

「私は深井商店です」って言えるのか。オリジナリティの共有の難しさ

—深井商店さんのオリジナリティ。これを守り続けることが深井商店らしくあり続けることなんですね。
それをみんなで思うっていうのは 凄く難しいことですよね。僕らは、家族でしか営業してないんですけど、それでも、どうしても一人ひとり違ってくるんですよね。

だから「私は深井商店です」って言うのは、すごく難しい。改めて考えても、「深井商店の一員」として同じ感覚を共有するのって、ものすごく難しいと思うんですよね。


だから、ありがたい話なんですが、「ここに出店しませんか?」と、お話貰うことも結構あるんですよね。けど、「深井商店です」っていうのが、家族ですら難しいことを知ってるから。せっかくお話で申し訳無く思いながら、全部断ってるんですよね。

遠くの方にもクロワッサンを食べて欲しいし、 声をかけて貰って単純に嬉しいって思いもあるんですが、結局その「難しさ」の部分に行きついてくるんですよね。けど、お店を増やして、そのお店に僕もいなくて、妻もいなくて。

それで「深井商店です」って言えるのかって。 ちょっと違ってしまうんじゃないかって。

だから今はお断りをしているのが正直なところなんです。とは言え、 迷うこともあるんですよね(笑)遠くからいつも買いに来てくれているのに、完売してしまって販売できないってこともあるし。そういう時は、お店を増やすって必要な事かもしれない、って思うこともあるんです。


けど、それで無理してお店増やしてしまったら、どうなるんだろうっていうのも考えます。

結果、今、深井商店に来てくれる方、今、目の前にいる方に、しっかり喜んでもらうっていうことができなくなると思います。それなら、僕らがお店を増やす理由が無いなって、やっぱり戻ってしまうんですよね。

経営の観点から見たら、もっと大きくしたり、もっと社会貢献できるような活動ができたら、それはそれで素晴らしいとは思うんです。けど、今のままで十分、家族が満足して暮らしていける規模で満足かなと。

僕の個人的な好みというか、考えなんですけど、会社って大きくなりはじめたら、大きくなり続けないといけない気がするんですよね。それもあんまりしたくないし。

それとクロワッサンって、食パンと違って、毎日食べるものではないと思ってるところもあります。ちょっと特別感のあるパンの種類だよなって。そうなると、波みたいなものがあるかなって予想もしてます。

なので、一生続けれるかっていうと、そうも思ってない。


けど、今できること。それを一生懸命やる っていうところですね。

ずっと考えているのは「気持ち良くクロワッサンを買って帰ってもらうこと」

—今できること。それを構成する大きな要素が、クロワッサンと接客 ということなんですね。
単純に、そうなりますね。もちろん色々と多岐にはあるんですが大きく分けるとそうなります。 クロワッサンだけで終わるんじゃなくてお客さんとの関係性も大事にして。

今日もそうですよね。

クロワッサンを買って、というだけの関係なら、 こうしてお話することも無かったし、こういう関係にはなれなかったと思うんですよね。


—確かに。繋がりを大事にしてくれていなかったら、こんな風にお話を聞くことはできなかったですね。
深井さんが、繋がりを大事に考えるようになったのは、お店をはじめたすぐからですか?
う~ん。どうかなぁ。

お店をはじめたときは、もっと必死で考えていたようで、考えて無かったかもしれないですね(笑) けど、僕自身も深井商店自体も、変わってないように思うんで、根っからそういうふうには考えていたんでしょうんね。

今もですけど、深井商店のクロワッサンが美味しくないとか口に合わないっていうことは、お客さまによって、もちろんあります。それこそ開店当初は、そういうの気になってエゴサとかめっちゃしてました(笑)

そしたら、行列が迷惑とか、並ぶのが嫌だというのも見かけて。列が一番伸びてた時期は、お店から列が出て、大きい道路の方まで行って、更に 交番までかかっちゃって…。駐車も近くのお店にご迷惑をおかけしたりして…。

反省しましたね。それで、これはもう、土日は営業できないな、って。土日営業したら、皆に迷惑かけちゃうなって。

行列に並んでもらっても、最後買えなかったお客さんもたくさんいて。そのお客さんに「申し訳ありません」ってお伝えしてるところ写真撮られてネットに上げられて…。

—そんなこともあったんですね。
そうなんですよね。けど、そういう風に、とにかく一個一個。できる範囲に落とし込んでいきながら、 自分達の手の行き渡る範囲を探っていくような感じでいましたね。


そういうふうに進めていって、大きく括ったらクロワッサンと接客って言葉になってる感じです。そして、友達にような繋がりができたら、僕もやっぱり嬉しいなって。ベースとして、気持ち良くクロワッサンを買って帰ってもらうこと。そのことをずっと考えてるのは変わらないですね。

フェアな関係だからこそできる店作り

ちょっとニュアンスが難しい言い方になっちゃうんですけど、 お客さまは大事なお金を支払ってくれていて、沢山あるお店の中で 深井商店に来てくれて。本当に感謝してます。ただ、だからと言って上限関係になるということではないようにも思ってまして。偉そうですみません…!

—偉そうだなんて…全然思いませんがよ(笑)そう仰るところが深井さんらしいですね。
僕らとしては「この商品はいくらです」と言ってクロワッサンをお渡ししていて、そのお代を頂いて。そういう対等な関係なんじゃないかなぁって 思ってるんですよね。

買ってくださったお客さんも、きっと場所を変えたら、お客さんがいてそこでお代をもらって…。そういう繰り返しの中にいるんだと思うんですよね。だから、そこって上下ではなくてフェアな関係でいれたら良いですよね。フェアだからこそ、お客さまの声に素直に向き合える気もして。

前、パン屋さんで働いていた頃に上司に言われたことで「1人の人が言ってきたことがあったら、同じことを15人は思ってると考えるように」っていうのがありました。1人の言葉は氷山の一角ということですよね。


それが僕には響いて、今も頭に置いてます。


さっきの話に繋がりますが、もし「友達」が言ってくれたことなら、やっぱり寄り添って聞きますよね。もしかしたら、同じことを15人の人が思ってるかもしれないって。

フェアに。けど、寄り添う気持ちも忘れないように。それは心掛けるようにしていますね。

—色々な考えを聞かせてもらいましたが、そういった考えは昔からですか?
小学生くらいの時から、自分で何かやりたいとは思っていました。 協調性が無いから(笑)自分でやりたいなっていうのは思っていました。 親父は運転手をやってて。 1人で仕事するするイメージは自然とあったのかもしれませんね。けど僕は運転好きじゃないんですけど(笑)

友達のような、チーム深井商店という存在

–協調性が無いっていうのに友だちはいっぱいいますよね。
確かにそうですね。言われてみれば(笑)。友達は僕の誇りだし自慢なんですよね。 お店を出す時から、人の繋がりとか本当に人には恵まれてますね。

友達っていうのが合ってるのかもわからないんですけど、本当にみんな助けてくれて。 店出す前に働いていたお店の頃からのお付き合いのある取引先の人とか。 「今度僕、お店だそうと思って」って話したら「やっとですか」って言ってくれて。 「いつか絶対独立すると思ってましたよ」って。


それから、色んな種類の食材とか調べて提案してくれて。めっちゃ助かってます。チョコレートひとつとっても、もの凄い種類があるんですよね。 その中で、深井商店さんのクロワッサンに合いそうなの…ってある程度絞ってくれて。 そこから選ばせてもらえるし、実際すごく味も良いんですよね。


他にも、この箱とかの資材もそうだし。別の人ですけど、同じように力になってくれて。 そんなふうに「チーム深井商店」の輪が広がって行く感じに、感謝しかないですね。

実際にそういう方が「チーム深井商店ですから」って言ってくれるのも、めっちゃ嬉しいです。 僕の作るクロワッサンではあるんですが、 決して僕一人ではできあがらないものなんですよね。

さっき話した妻の接客があって深井商店なのと同じで、「チーム深井商店」みんなのおかげで成り立ってます。

そして、僕はお客さんもチーム深井商店だと思ってます。

そんな仲間が増えていくことが、やっぱり一番楽しいことに思います。

深井商店さんの奥深い魅力。 少しでもこのインタビューで伝わったらうれしいです。

クロワッサンが美味しいことは、もちろん大事なことですが、毎日完売する理由はそれだけではないことが、すごく良く分かりました。チーム深井商店の一員として、これからも「深井商店」さんの活躍を見守っていきたいと思っています。

さて、次回で深井商店さん編は最終回。

編集後記と、大事な「コーヒーについて」のことをまとめています。

※インタビューをゆっくり聞きすぎて、コーヒーについてのコメントを聞き洩らしておりました(笑)

どうか次回もお付き合いよろしくお願いします。

深井商店
〒006-0033
北海道札幌市手稲区稲穂3条7丁目5−1 〒063-0803 こがねショッピングプラザ

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大石 広土

この記事を書いた人 
こんにちは!珈琲きゃろっとの大石です。
毎日、お客様対応や焙煎業務など色んな事に携わっております。楽しいです^^
嬉しい言葉や、美味しい!のご感想をみては、「幸せな仕事がきてうれしいなぁ~」と実感してます。

そして、我が家のエンゲル係数異常値ですが、食道楽はやめられません(笑)
食道楽が高じて「どんな人が、どんなふうに作ってるんだろう」という興味を抑えきれず、素人ながら、家族で突撃インタビューをしています。完全に趣味です(笑)

美味しいコーヒーと同じくらい、この世の美味しいものが好き。もう、この気持ちに素直に生きています(笑)

コーヒーのこと、お客様やサービスのこと、きゃろっとのこと、食道楽のこと(笑)など色んな角度から魅力再発見するお手伝いができたら嬉しいです。

もし良かったら、コーヒーと一緒にお付き合い下さい。