こんにちは。珈琲きゃろっとの大石です。
前回は、深井さんがクロワッサンの専門店に決めた理由や、人気のクロワッサンを作る工程についてお伺いしました。そして、奥様の存在の大きさも!
今回は、クロワッサンというパン1種類に決めた理由を、前回とは別の切り口で話していただいてます。また、限定数や種類について、はたまた、奥様とのパートナーシップについても詳しくお話を聞いていきます。
「深井商店」さんを知っている人ならきっと共感できる、深井さんならではの考え方や哲学が垣間見える、素敵なお話がいっぱいです。
どうぞお付き合いよろしくお願いします。
食品のジレンマとも言える「ロス」から見た、クロワッサン
—クロワッサンに決めた理由は、まだあるのでしょうか?
ちょっと後付けっぽい言い方になってしまうんですけど、 今SDGSってよく聞きますよね。
ここからは、パン屋さんの裏話みたいになっちゃうんですけど…。
例えば100円のアンパンがあったとして、そこに必ず「ロス代」っていうのが含まれてるんです。ロス代って、それってはじめから捨てるのを前提にしてるじゃないですか。
僕は、それはしたくないなって思ってまして。
一般的なお店でよくやってることなんで隠すことじゃないんですけど、クロワッサンはその日に廃棄にならないんですよ。 仮に残ったら、じゃあ明日クッキー生地乗せて出そうって。そういうふうに、アレンジして販売できるっていうのがクロワッサンの特徴としてあるんですよね。
だから、もし残っても、そういうふうに無駄にしない方法があるなら「あ! クロワッサンなら ロス0 にできるな」って思って。そういうクロワッサンの特性も、お店をやると決めた際に「クロワッサン専門店にしよう」と考えた理由のひとつですね。
ただ、ありがたいことに、深井商店は7年目になるんですが、日々完売することができます。もちろん、ロスを出したことが1度も無いんです。
それは唯一、僕がこの店で誇れることです(笑)
残ってしまったらアレンジできるっていう話。もしかしたら、 聞いたら嫌な人がいるかもしれません。
けど、残ったらということではなくても、作業工程上どうしても前の日に焼いて置く分もあります。もちろん、美味しさに全く問題無いことは確認して作りますよ。
実は、クロワッサンてフランスでは1日置くんですよね。お店に並ぶのは焼きたての次の日、みたいにしてて。
焼きたてよりも 1日置いて味や香りが落ち着いた方が美味しい。 そう言われるパンでもあるんですよね。
僕自身もそう思ってて、確かに美味しいんです。もちろん好みはあると思いますが、その時間も熟成の一工程で、焼いた時にふわっとなってるのが、引き締まるような感じです。
僕が思う「美味しい」と皆の思う「美味しい」は違って良い。自由さがあって良い。
—深井さんの思う「美味しいクロワッサン」とは?
もちろん僕なりのこだわりというか、 目指している味はあって、その「深井商店のクロワッサン」と自信を持って出せる品質は絶対に守っています。なんか偉そうに言ってますが、当たり前ですよね(笑)
クロワッサンは繊細で、工程の一つ違うだけで変わってしまうし、 やり直しができないんです。ちょっと間違ったからって、もしやり直しをしたら、全然別物になっちゃう。
それは絶対にお店に出せないし、そういう基準は絶対に守ります。
ただ、美味しさっていう基準は、人によって違うっていうことも思うんですよね。好みが違うし。 そういう意味で、美味しさを押し付けるようなことはしたくないな、とも感じてます。
だから、極端な言い方をしたら、 買っていただいた方が美味しいと思って食べるならそれで良いかなと思ってて。 自由に。その人の美味しいと思う味を考えて貰って、それで楽しんでもらうのが結局一番じゃないかなって思うんですよね。
例えば、クロワッサンのそのままより、あんこ挟んだ方が美味しいとか。冷凍庫で冷やして食べた方が美味しいとか。それで良いと思うんですよね。
だから提供側が「こうしてください」っていうのは無くて良いかなって。 たまにあるんですよね。こうしてください。必ずこう食べてくださいっていうのが。
もちろん、僕もベストな状態で食べて欲しいっていう想いはありますが、 じゃあ、ベストって?一番美味しいって何?ってなったら自由で良いなって思うんですよね。
せっかくお金出して買ってくれて。もうそこからは、本当、自由に楽しんで貰えたら良いなって思ってます。
日々の限定数は、できる限りの製造数。喜んでくれる人のことを思いながら。
—それは、クロワッサンには色々な楽しみ方ができるポテンシャルがある、ということでもありますよね。
深井商店さんの種類の豊富さがそれを物語っているように思います。
最初は5種類くらいだったんですよ。当初は、こんなに沢山の種類になるとは思ってなかったんですよね(笑)
お店をはじめる時に、パン屋さんてどのくらい売れんだろうって思ってて。大型店では働いていたから、わかるんですけど。 自分一人で営業するこの規模だとどのくらいなんだろうって。
だから、はじめは3万円目標で設定したんですよね。であれば、1個200円なら150個。これは何としても売ってやろうと。けど、ちょっと待てよ。150個売るのに1種類では難しいな、となって。
1種類を1個買うお客さん、150人も来ないだろうと思ったんですよね。 だから、種類を増やすことで、一人のお客さんで2個とか3個 買ってくれる機会が増えるんじゃないかと考えました。
けど、いざ開店してみたら、来てくれるお客さんが想像以上に多くて。本当ありがたいですよね。 150個が2時間とかで完売してました。ぜんぜん持たなくて。初めは、製造からレジから一人でやってたんですけど、 ちょっとこれ一人じゃ無理だなって。それで妻にお店に入って貰って、僕は製造に集中することで増産していくことにしました。
そこから1日300個になって、500個になって…というふうにやってきてます。その中で種類も自ずと増えていって、という感じですね。
—今は500個ですね。今後は、更に増やしていくのでしょうか?
いや、もう無理です(笑)もう限界です。 例えば、1日だけ特別に800個作ってくれっていうのがあったら
もしかしたらできるかもしれないけど…。
毎日で考えたら、もう500個で限界ですね。
開店する時に妻と話していた「自分のペースでできる」っていう範囲を超えちゃいます。いや、もう今でもちょっと超えてるくらいで(笑)パンパンです。
本当のことを言うと、「ゆとりを持って、無理のない範囲で」っていうと 300個くらいになるんですよね。 そう考えると今作っている量は倍くらいになってます。
ただ、今300個だと開店して1時間くらいで終わっちゃう量です。せっかく来てくれるお客さんのことを考えると、もう少し頑張りたいって思いますよね。
僕のクロワッサンと妻の接客で「深井商店」
—それにしても、奥さまと二人三脚。頼りにされていますね。
本当、それも繋がってくることなんですけど、 僕は「僕の作るクロワッサンが世界一だ」とは思ってないんですよね(笑)
だから、妻の接客と、僕の作るクロワッサンが「5:5」だと考えてるんですよ。もちろん、僕の作るクロワッサンを目当てにしてくれているお客さんもいますけど、 妻に会いに来たり、接客を楽しみにしてくれているお客さんも沢山いるんですよね。
「いやぁ、今日天気良いですね~」と気軽に話してくれて。 そういう目的で来てくれる方が実際非常に多いです。
この前あったのが、近くに住んでいる方が、お手紙を書いてきてくれて。 「実は、今度旦那の転勤で引っ越すことになって…深井さんと離れるのが寂しい」って。
なんか、そういうのを見ていると「うちの嫁、最強なんじゃないか!?」って。 たまたま1回そういうことがあった とかじゃなくて、何度もあるんです。ありがたいことに。
ちょうど先週も、「離れることになって寂しい」って泣いてくれた方が遠くから遊びに来てくれて。 本当そういうのって嬉しいじゃないですか。僕も泣きそうになってます。いつも。
そうそう、ちょうどそこに大根が置いてあるじゃないですか。 これもお客さんが持ってきてくれたものなんです。ちょうどさっき(笑)
これをくれた方は、農家さんでは無いんですけど、趣味で無農薬で野菜を作ってるそうなんです。それで、持ってきてくれる野菜が全部美味しい。 レタスとかもお店で売ってるのと全然違って。
いつも、野菜採れたから明日持ってくわって、連絡くれて。
クロワッサン買ってくれて、みたいな繋がりがあって。
こういう縁が本当にうれしいですよね。
—お話が進むにつれ、深井さんの面白さや魅力がどんどん伝わってきます。
次回の記事では、深井さんが大事にするお客様との関係性、そのキーパーソンとなる奥様のスタンス。また、人生で大事にしている友人や家族、音楽についてなど、盛りだくさんで伺っております。ぜひ続きもご覧ください。
夫婦で作り上げるからこそ、絶対に他にはないものができる クロワッサン専門店 深井商店 インタビュー③
きゃろっとの実店舗にも、お客さまが立ち寄ってくれて、採れた野菜や旅行のお土産などを持ってきてくれることがあります。そのお客さまとの関係性は、深井商店さんとすごく共通しているように感じています。
高い専門性と、アットホームなお店の雰囲気。きゃろっとと、凄く似ているな~。
この記事を書いた人
こんにちは!珈琲きゃろっとの大石です。
毎日、お客様対応や焙煎業務など色んな事に携わっております。楽しいです^^
嬉しい言葉や、美味しい!のご感想をみては、「幸せな仕事がきてうれしいなぁ~」と実感してます。
そして、我が家のエンゲル係数異常値ですが、食道楽はやめられません(笑)
食道楽が高じて「どんな人が、どんなふうに作ってるんだろう」という興味を抑えきれず、素人ながら、家族で突撃インタビューをしています。完全に趣味です(笑)
美味しいコーヒーと同じくらい、この世の美味しいものが好き。もう、この気持ちに素直に生きています(笑)
コーヒーのこと、お客様やサービスのこと、きゃろっとのこと、食道楽のこと(笑)など色んな角度から魅力再発見するお手伝いができたら嬉しいです。
もし良かったら、コーヒーと一緒にお付き合い下さい。