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毎日完売するクロワッサン専門店。沢山のお客さんを魅了する、 美味しさの秘密とは!? クロワッサン専門店 深井商店 インタビュー①

こんにちは。珈琲きゃろっとの大石です。
美味しいお店にインタビューする企画の4回目。ゆっくりとにはなりますが、僕の興味と食欲が続く限り継続していきます(笑)

さて、今回お邪魔したのは札幌市手稲区にあるクロワッサン専門店「深井商店」さん。
インタビューのお話は以前からあったのですが、なかなかタイミングが合わず、今回待望の機会をいただきました。

今回もインタビューの布陣は、安定の大石家総出のスタイル(笑)僕、妻、娘二人で突撃です。
子供たちは一際張り切ってこの日を迎えました。その気持ちを察してか、 深井さんが子供たち用に「パンに自由にトッピングができる」職場体験をご用意くださっていました。ビッグサプライズ!

平たいクロワッサン生地に カスタード、チョコレートやフレーク、クッキーをトッピングできます。「おじさんが後で片づけるから、好きにやって良いよ~」と笑顔で言ってくれました。子供たちはワクワク。完全に目がハートです(笑)

深井 「なかなか無いじゃないですか、こういう体験って」
大石「いやぁ、無いですよね。貴重な経験です。な…なんて優しい…!」
深井「僕自身こういう体験ってやったことなくて、 けど石屋製菓さんでお菓子作りの体験があるじゃないですか。 この前、子供連れてい行ったんですけど、凄く喜んでいて。だから今日、用意しておいたら喜んでもらえるかなって思ったんですよね。」
大石「・・・!(言葉にならない感動)」

深井さんの心遣いに感動しながら、今回のインタビューはスタートします。

行列ができる、毎日完売するクロワッサン専門店。 ものづくりへのこだわりと、お店作りの愛情。とても詳しくお話いただけました。 ぜひお付き合いください。

深井さん、今日はよろしくお願いします!


—今日はよろしくお願いします。
こちらこそ、よろしくお願いします。


—子供たちにもお気遣いいただいて、ありがとうございます。
いえいえ。

子供って自由にやらせてあげたら、 大人の方が驚くようなものを作ったりするじゃないですか。 単純に作ることを楽しんでるような感じで。今日、少しでもそういった気持ちを感じてもらえたら嬉しいですね。

—もう、大興奮です(笑)本当にありがとうございます。 今の話の繋がりのようになりますが、 深井さんがクロワッサンを日々作る時も「楽しむ」感覚で作っているんですか?
う~~ん。どうかなぁ(笑)


朝も早いですし毎日のことになると、 慣れてきたり、作業に飽きみたいなものを感じてしまうところは正直ありますよね。


けど、今日こうして大石さんが話を聞きに来てくれたみたいに、 僕が作るクロワッサンで新しい「友達」ができたり、 喜んでくれるお客さんのことを想像したら、クロワッサン作るの楽しみになりますね。それは結構毎日思ってることかもしれないです。

—お一人で全部のクロワッサンを作るのは大変な作業だと思いますが、「楽しみ」に思いながら作れるのは凄いですね。 差し支えなければ、具体的な工程も教えてもらえますか?
全然大丈夫ですよ。何でも聞いてください。

何でも話しちゃいますんで(笑)
けど、工程の所は詳しく話すとかなり色々なことがあって、お時間大丈夫ですか?

ざっくり、まず機械についてですね。
オーブンで1回に焼けるのが40個。発酵させる機械が1回160個なんです。 だから、できる量に限界があるし、それぞれに、結構時間がかかります。

では、工程について順を追って説明していきますね。

できあがるまで3日かかる。王道だけど他には無いクロワッサン。

まず生地を作ります。
僕は北海道産の小麦だけ使ってます。出来上がりを食べてみたらすぐわかるんですけど、やっぱり北海道産、美味しいですね。

次に、できあがった生地を寝かせるんですけど、そこに深井商店の味作りの「味噌」があります。 一般的には冷凍してガチガチ凍らせるんですが、そうすると どうしてもイースト菌の元気がなくなってしまうんですよね。

だから、僕は冷凍させるんじゃなくて、イーストがギリギリ凍らない温度にして、しっかり生地を熟成させるようにしています。

ここが僕が考えるもっちりした食感のクロワッサンを作るのには、凄く大事な工程なんですよね。 本当、この熟成っていうのが大事で。発酵っていうのが、生地が大きく膨らむことだとしたら、 熟成は旨味を増やしていくことなんですが、その熟成をしっかり行うためにこの工程に丸1日かけます。

次は、その生地にバターを包んで「折り込み」という工程をやっていきます。折り込みで生地を薄くして、折りたたんで…というふうにして、27の層を作っていきます。27層っていうのはクロワッサン作りの中では一般的な層の数です。


僕としては、この部分は「オリジナル」になりすぎないように、みんなが食べやすいような仕上がりにするように一般的な27層にしています。お客さんが思う「クロワッサン」への期待から外れない美味しさが大事かな、と思ってて。

だから、よく変わったことしてるんでしょ?と言われるんですが、ここは教科書通りなんですよね。だから、隠すことが無いというか(笑)王道の作り方をしています。そして、ここの工程が終わったら、また1日寝かせます。

次に成型ですね。3角形を作ってクルクル丸めて…という流れです。形を作って、2時間10分発酵。そこで1.5倍に膨らんで。

それから焼いて1.5倍に膨らんで。これで、出来上がりです。

—とても時間と手間がかかっているんですね。
うちのクロワッサンは3日かかって作っています。

僕の裏事情をばらすようですが(笑)これだけ時間ががかるので お店の営業がお休みしている日も、僕は動かないと間に合わないんですよね。けど、やっぱり喜んでくれる人がいるから、頑張れますよね。

アップデートを続けて、行き着いた工程

—この工程に行き着いたのに、理由があるんでしょうか?
この辺りは、点と線になっていくんですけど、僕一人でできるお店の大きさを考えてたんで、 機械も設備も、限られた中で作る。そういうところからはじまっているんですよね。


例えば冷蔵庫ひとつとっても、ここにあるこの1台。それでなんとかやりくりしないと、と試行錯誤していったというのが正直なところで。だから、色々な設備や機械を使って試し尽くしたというよりも、この厨房環境では他に手が無いというような(笑)これしかないから という中で、積み重ねていった点が線のように繋がって、今の作り方になってます。

その気持ちの奥の方には、きっと劣等感みたいなものがあると思います。

僕自信に、他には無い技術があるとか、凄いお店で働いていたということがなくて。だからこそ、毎日もっとこうした方が美味しいんじゃないか、と商品を変えたりアップデートしたり、を繰り返してます。

それは、「美味しくないものを作ってるから、変えないといけない」ということではなくて。その時、その時の100点を作るようにしているんですけど、それでも 人は必ずアップデートされてると思うですよね。それは僕だけじゃなくて、買ってくれるお客さんも同じで。


きっと、皆さん、美味しいものを食べる機会があると思うんですよね。新しい経験を積んだり。新しい感覚を持ったり。だから、今までと同じものでも、久々に食べたら「あれ?こんな味だっけ?」ってなったりしますよね。


それって実は、食べ物の方は何も変わってないけど、食べる人の方が変わってることが多いんじゃないかなって思うんです。いつの間にかアップデートされてる感じで。だから、僕も進化していかないと、って思います。大変ですけどね(笑)

それがクロワッサン「専門店」の難しいところというか…でも、これが醍醐味ですよね。

—専門店だからこそ直面する壁、ということでしょうか?
一般的なパン屋さんであれば、お客さんの気持ちとして「今日はこのパンにして、次は別のにしよう」ってできると思うんです。けど、うちはクロワッサンに限られてるので、それができないんですよね。だから、同じことをずっとやってても、いつか飽きられてしまう。


変わらない良さとか、同じでい続ける難しさもわかるから、否定するつもりは全くないんですけど、僕としては、時代の変化やお客さんの変化に対応をしていかなきゃならないと思ってます。

特に食べ物って、その求められることの変化が、わかりやすく大きかったりしますよね。例えば最近なら、時代なのかもしれませんが、美味しくなくても流行ったりして。

求められていることが、「美味しさ」よりも、見た目が良いとか、なんか変わってるとか、みんなが買ってるとか。味よりも別のことで人気になったり。それって、作り手側としては、美味しさよりも、新しいお客さんを増やすっていうことを重視してるような感じがしています。

綺麗ごとって言われるかもしれないけど、僕個人的には「食」ってそうじゃないよなぁって思ってるんですよね。美味しいって言ってくれる人数が、自分が営業する上で、もう足りていれば増やす必要は無くて。

だから、美味しいって言ってくれる人たちに、どれだけ長く愛してもらえるかが大事なんじゃないかと思うんです。

それはさっきのアップデートのこともそうですが、今営業している中での色々なところに繋がっています。

そもそも、どうしてクロワッサン専門店?

—なるほど。そもそものお話になりますが、どうしてクロワッサン専門にしたのでしょうか?
そうですね。

ずっと前まで遡るんですけど、自分で店を出す前、僕はいろんなパン屋さんで働いていたんですよね。どこも結構大きなパン屋さんが多くて、マニュアルのようなものがしっかりあって。だから、こう言っては何なんですが、師匠みたいな人はいないんですよね。

だから自分で色々と勉強して。独学で調べてみたりして。そんなことをしながらパン屋さんで働いてたら、ある日、急に小麦アレルギーになっちゃったんですよね。


家帰って、お風呂入って出てったら妻に「背中どうしたの?」って言われて。アレルギーの症状が出てたみたいなんですよね。で、病院で調べたら、パンを作る時に使うものが色々と引っかかってしまいました。


初めは舞っている粉がダメなんじゃないかって騙し騙しやってたんですが、今は焼いてあるものもダメになってきて。厳しいですよね(笑)けど、これって結構あるあるで。パン屋さんとかお菓子屋さんとかも多いみたいですね。

やっぱり、まぁ小麦アレルギーでパン屋さんは厳しいなってなりますよね。だから転職して、どこかで違う職探さなきゃなと思ってたんです。

けど、 妻に「それなら、自分のペースでできることをやったら良いしょ」って言われて。それまでは、転職しか考えていなかったし、自分の店をやるなんて思っても無かったんですよね。

それで、自分でできることって何かなって思ったときに、俺は今までパンしか作ってこなかったなって。

そしたら「じゃあ、自分のペースでできるパン屋さんをやれば良いしょ」って妻が言ってくれて。
「やってダメだったら、ダメで良いしょ」って。

—深井商店さんが今あるのは、奥様の言葉あってのことなんですね。
本当そうですね。

もともと妻は手に職があって、美容や着付け、マツエクや爪なんかもできるんです。だから「生活するだけなら私の稼ぎでなんとかなるし」って背中を押してもらえました。その言葉が無かったら、深井商店をやってみようとか、自分で店をやろうっていう発想すら無かったですね。

そこからは、もうどんどん進めて、バタバタでした(笑)

その年の1月くらいに長男が生まれるって頃で。この店がオープンしたのが同じ年の6月なんですよね。その頃は本当にバッタバタ(笑)決めることがいっぱいだったんですけど、なんか良いように転がってくれました。

それで、話戻るんですけど、自分で「パン屋をやる」って決めたときに、今までと同じことしてても、ただの繰り返しだなって思って。例えば、フランスパンがあって食パンがあって…みたいな一般的なスタイル。それはできないなって思ったんです。

だから、もっと絞って「自分は何が好きかな」って考えて。パン屋さんに行ったら「毎回、必ず買うものって何かな」って思って決めたのが「クロワッサン」だったんです。


それと、クロワッサンは製造時に、一番粉が舞いにくいということもあります。だから、「あ!毎日の作ることを考えてもクロワッサンだ!」って。そこがうまく繋がったんですよね。


だから「クロワッサン」だけにしよう!って。

—なるほど。色々な点が、どんどん線に繋がっていきますね。
「クロワッサン」の専門店にしようと決めて、開店、そして人気店となっていく部分についても、どんどん聞きたいことが増えてきます…!繋がっていった線が、どのように形作っていくのか。お話がとても楽しみです。

次回…
「深井商店」がクロワッサンを通じて考える、「美味しさ」と「お客さまとの関係性」 クロワッサン専門店 深井商店 インタビュー② へつづく!

柔らかい印象で、子供にも凄く優しい深井さんですが、クロワッサンへの想いや、お店のことなどを質問するに、キリッとした眼差しで答えてくれて、多岐に思いを巡らせていることを実感します。

その考えの一つひとつが繋がることで、今の「深井商店」があることが、とても納得できます。

そして、深井さんと一緒に「深井商店」を切り盛りする奥様の存在の大きさ。絶大な信頼感が話の端々に見えました。

次回はもっと具体的にその辺りのお話も聞いています。どうぞお楽しみに!




深井商店
〒006-0033
北海道札幌市手稲区稲穂3条7丁目5−1 〒063-0803 こがねショッピングプラザ

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大石 広土

この記事を書いた人 
こんにちは!珈琲きゃろっとの大石です。
毎日、お客様対応や焙煎業務など色んな事に携わっております。楽しいです^^
嬉しい言葉や、美味しい!のご感想をみては、「幸せな仕事がきてうれしいなぁ~」と実感してます。

そして、我が家のエンゲル係数異常値ですが、食道楽はやめられません(笑)
食道楽が高じて「どんな人が、どんなふうに作ってるんだろう」という興味を抑えきれず、素人ながら、家族で突撃インタビューをしています。完全に趣味です(笑)

美味しいコーヒーと同じくらい、この世の美味しいものが好き。もう、この気持ちに素直に生きています(笑)

コーヒーのこと、お客様やサービスのこと、きゃろっとのこと、食道楽のこと(笑)など色んな角度から魅力再発見するお手伝いができたら嬉しいです。

もし良かったら、コーヒーと一緒にお付き合い下さい。