今回もかなりマニアックな道具を手に入れてしまいました。
その名も「KRUVE Sifter(クールヴ シフター)」。
コーヒー粉をふるいにかけて、粒度を揃える道具です。
きゃろっとでも、挽き具合のお問い合わせをいただいた際には、なるべく粒度を揃えて挽くようにご案内しておりますね。
では、なぜコーヒー粉は均一であった方がいいのでしょうか?
それは、大きい粉が多く粗すぎると抽出不足になったり、逆に細かい粉が多すぎると過抽出になったり…。これでは思い通りの味にならず、安定した味を出すことがとても難しいんですよね。
毎回同じように、均一な粒度にコーヒー豆を挽けることが、「安定した美味しい味への第一歩」ということです。
きゃろっとでも色々なコーヒーミルを試した結果、均一に挽けるミルとして、ボンマックやみるっこをご紹介しています。
▼ 「コーヒーミル比較!おすすめのミルは!?」は、こちら
でも、いくら性能の良いコーヒーミルだって、よーく見るとバラつきはあります。
みなさまがご自宅でお使いのコーヒーミルだけでなく、業務用のコーヒーミルだって、ある程度は微粉が出てしまいます。
では、この微粉がどれくらい味に悪影響があるのか?
そもそも悪影響があるものなのか?
そこで、コーヒー粉の粒度を揃えることが、どれくらい味に影響があるのかを、きゃろっと的に比較実験をして調べてみました。
KRUVE Sifter(クールヴ シフター)ってこんな道具
今回実験に大活躍したのは、「KRUVE Sifter(クールヴ シフター)」という金属フィルターです。
付属しているフィルターは、200μm~1600μmの合計15枚。
その中から、淹れ方やお好みに応じてフィルターを選び、粒度を揃えます。
今回は、極端に粒度を揃えるため、1000μmと1500μmのフィルターを使用し、1000μm以下の微粉と1500μm以上の大きい粒やチャフ(薄皮)を取り除きます。
下の写真のように、3段になっているので、一番上が 1500μm以上の大きい粒やチャフ 。
一番下に1000μm以下の微粉。
そして、真ん中の段に目的の粉が振り分けられます。
60秒ほど振り続けて、開けてみました。
ちなみに、振り分ける前がコレです↓
■1500μm以上の大きい粉と薄皮(チャフ): 4.6g/50g
■粒度を揃えた粉: 26.4g/50g
■1000μm以下の微粉: 21.2g/50g
おぉ~!1500μm以上の大きい粒は想像以上に少なかったですね!
逆に、1000μm以下の微粉がかなり出ました。
並べて見比べてみると、違いがはっきり分かります。
これは、味の変化に期待が持てそうですね。
それぞれの分量を計測してみると、1500μm以上は4.6g。
粒度を揃えた粉は26.4g。
1000μm以下は21.2g。
半分くらいになってしまいましたね。
少ない(笑)
ネルドリップで比較!
早速、きゃろっと式のネルドリップで検証です。
■実験方法
コーヒー粉:60g
湯温 :87℃
抽出液 :150ml
足し湯 :450ml
完成量 :600ml
お湯を注ぐと、すぐに違いが表れました!
そのまま挽いたものと比べると、粒度を揃えた粉は、スーッとお湯が落ちてしまいます。
全体の抽出時間も早いようですね。 抽出時間も計っておけばよかった…
そして、出来上がりの濃度にも違いが出ました。
左が❶そのまま挽いた粉で淹れたコーヒー、右が❷粒度を揃えた粉で淹れたコーヒーです。
こうして見比べてみると、 ❶の方が、わずかに濃いのが分かりますね。
この違いは、やはり粒度の違いと言っていいでしょう。
❶のそのまま挽いたコーヒー粉50g中、約40%が1000μm以下の粉です。
この細かい粉があることで、お湯が通りにくくなり、粉とお湯が接している時間が増えます。
一方で、❷の粒度を揃えた粉には、微粉が含まれていないので、通り道ができ、スーッとお湯が落ちます。すると、❶に比べると粉とお湯が接している時間に違いがでますよね。
これが、出来上がりのコーヒーの濃度にも繋がります。
お湯と粉が接する時間があまりに多すぎると、雑味に繋がるのですが、今回はどのような結果になるのでしょうか。
飲み比べ結果
❶のそのまま挽いた粉で淹れたコーヒーは、いつもの味だね!
熱々のときと冷めたとき、温度変化による味の複雑さがあって、美味しいなぁ~。
でも、完全に冷めてからは、一番酸味を感じるかも。
これは、微粉によって、酸味が出てしまっている可能性が考えられるね。
次は、❷の粒度を揃えた粉で淹れたコーヒーだね。
❶に比べると、断然クリーンになって、とっても飲みやすい!
今回は、ボディ感のあるケニアを使用したんだけど、口当たりが軽くなっているね。
味にフォーカスして、マイナスポイントを挙げるとすれば、複雑さがなくなっちゃうかな?単調な味になっちゃうイメージ。
ちなみに、もうひとつ。
粒度を揃えた60gのコーヒー粉を用意してたら、微粉だけの粉が60gできちゃったから、淹れてみたから飲んでみて(笑)
さすがに細かすぎたのか、なかなかお湯が浸透しないし、抽出時間も倍以上掛かってるんだよ。
うえ~ッ、酸っぱい!!
尖った強い酸味で、あごがきゅーってなってる。
冷めてくるとより酸味は強調されて、渋みもあるね。
…ということは、❶を飲んだ時に感じた「冷めてからの酸味」は、やっぱり微粉由来のものだったんだ!
きゃろっと的まとめ
「KRUVE Sifter(クールヴ シフター)」をご購入の検討の方は、きっとクリーンさにとても期待しているかと思います。もちろん僕たちも、同じです。
きゃろっとで理想としているコーヒーの特徴のひとつが「クリーンであること」なので、これを追い求めて、「KRUVEで完璧!」なんて想像していました。
確かに、❷の粒度を揃えることでかなりクリーンなコーヒーに仕上げることができましたが、味が単調になってしまったのです。
上のコメントにもある通り、❶のそのまま挽いた粉で淹れたコーヒーは、味が幾層にも感じ、温度変化によって複雑な味わいになります。
みなさまのお好みにもよりますが、「色んな味のする複雑なコーヒーがお好きなのか」、「究極にクリーンなコーヒーがお好きなのか」によっても感じ方は異なりますよね。
個人的には、ここまで手を掛けてやるまでのことはないのかな~と思いますが、お好みです。
また、特に感じたマイナスポイントは、普段使うには、捨ててしまう粉が多すぎるということ。
今回の挽き具合では、60gの粉を集めるのに、約130gのコーヒー豆を用意する必要があります。
これではさすがに、無駄が多すぎますよね。
今回の比較実験で分かった大きなことは、強い酸味と渋みの原因でもある細かい粉が、必ずしも「悪」ではないことです。
いつも通り挽いている粉の中に、少量でもバラつきのある粉が存在することで、出来上がりのコーヒーに奥行き感を表現していたのです。
今後は、さらにフィルターを使い分け、複雑さは残しつつ、よりクリーンな味わいで、かつ無駄の少ない挽き具合を見つけていきたいですね!
後記
実は、KRUVEで推奨している挽き具合は、右の画像の通り。
エスプレッソを除けば、500~800μmのくらいの挽き具合で、何でも淹れることができそうですね。
でも、実際に挽いてみた挽き具合を見ると、きゃろっとがおススメしている挽き加減に比べて、少し細かいようです。
このため、今回はかなり粗目に調整して見ましたが、これも出来上がった濃度の薄さにつながってしまったことが考えられます。
次回の反省ですね。
この記事を書いた人
珈琲きゃろっとの生産管理をしている浅野です。
コーヒー屋だから知っていることやちょっとした豆知識など、みなさまのコーヒータイムにお役立ていただけるような情報をお届けします。
日々のコーヒー実験は、妻のバリスタさーやんと一緒に。仕事場でも自宅でも、いつもコーヒーの話ばかりしているコーヒーオタク夫婦が、きゃろっと的に検証していきます。
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