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あなたは何を基準に物を選びますか? オーガニック認証編

こんにちは!バリスタさぁやんです。
 
お客様から
「オーガニックコーヒーありませんか?」
「フェアトレード認証のものは、ありますか?」

と質問をいただく時があります。

※フェアトレード認証…開発途上国の作物や製品を適正な価格で取引し、生産者の生活をサポートする認証
 
商品が多様化し、溢れる情報の中で、どんな商品を選択するか、というのが非常に難しくなってきていると感じます。
 
きゃろっとでは「オーガニック認証だから」「フェアトレード認証だから」という理由でコーヒーを選びません。
 
現地を訪れ、また生産者と話しをするなかで、
 
「オーガニック=品質が良い」
「オーガニック=体に良い」
「フェアトレード認証だけが、公平な取引をしている」  
という風潮に疑問を抱くようになりました。
 
今日は、スペシャルティコーヒーの仕組みと、きゃろっとがコーヒーを選ぶ基準に沿ってご紹介していきますね。

スペシャルティコーヒーとオーガニック認証

きゃろっとで取り扱っているコーヒーは、すべてスペシャルティコーヒーというコーヒーです。

※スペシャルティについての記事はこちら

スペシャルティコーヒーの最も大切な考えが、「From seed to cup = 種からカップまで」です。
 
簡単にいうと「顔の見える生産者」が作った、あなたのカップに入るまで、一貫して品質が管理された「美味しいコーヒー」のこと。
 
そして、もう一つが「持続可能な産業として発展すること」という考えです。
ずっとコーヒーが飲み続けられるように、発展し続けるということです。
 
では、コーヒーが持続的に発展していくには、何が必要だと思いますか?
 
実は、これに答えが隠されています。

ずっとコーヒーが飲み続けるために必要なこととは?

持続的な発展のためには、生産から消費までのサイクルが、回り続ける必要があります。
 
「持続可能」という言葉を聞くと、どうしても「コーヒー生産」に目がいきがちですが、重要なのは回り続けるということ。
 
「生産者」も、そのサイクルを回す一部であって「輸出業者や商社」「焙煎して販売するコーヒー屋」「購入して飲む消費者」の全てが揃って初めて、歯車がスムーズに回ります。
 
「コーヒーを作る生産者」がいなければ、コーヒーを飲むこともできません。

もちろん、私たちコーヒー屋は存在することもできません。

しかし「コーヒーを作る生産者」が居ても「飲む消費者」がいなければ、生産することもできません。
 
種からカップまで、携わる人の全てが必要不可欠です。
 
さて、次は持続的にサイクルを回すための一つ一つの項目にフォーカスしていきましょう。

ずっと続くコーヒー生産とは?

まずは、「生産現場」をフォーカスしていきましょう。
 
持続的に生産し続けるには、まずは、生産現場に必要なことがあります。
 
①生産し続けられる豊かな土地であること
②収入が安定し、安心した生活を送れること


この二つが成り立たなければ、持続的に生産し続けることは不可能です。
 
一昔前までコーヒーは「たくさん栽培して、たくさん売る」ことで、収益があがっていました。

それ以外に、コーヒー生産者の道はなかったのです。
 
コーヒーが安く買い叩かれていた時代、 とにかくたくさん栽培して売らなければ、手元にはお金が残りません。

自分たちの生活を守るためにも、量が必要だったのです。
 
しかし、それが続くとどうなるか。
 
どんどんと土地が痩せて、植物が育たなくなり、最終的には自分たちの生活が苦しくなってしまいます。
 
このコーヒーの仕組みを抜本的に変えるための仕組みが「スペシャルティコーヒー」です。
 
「量」だけを求めていたものから、「質」を求めるようにしました。

そして、「高品質なコーヒーには、それ見合った適正な価格で取引をしよう」となったのです。
 
さらに持続的な生産を続けるということは、どういうことか。

それは、「品質を上げ、収益をあげる」だけではなく「自然の多様性を守りながら、コーヒーを栽培する」必要があるということ。
 
コーヒーノキだけが植えられた山に、コーヒーの木の木陰となるように、バナナやマンゴー、アボカドを植えるようになりました。

むやみやたらに使われていた農薬を減らし、より自然に近い状態でコーヒーを栽培するようになりました。

そうすると、森には、鳥が戻り、虫が増え、土壌が肥えてきます。
 
水の使用量を減らすために、新たな精製方法が生まれました。

ハニー精製と言われる方法では、水の汚染が減り、新たな味わいも生まれました。

高品質なコーヒーを作れば、たとえ一袋(60㎏)でも取引ができます。

たくさん作らなくても、丁寧に栽培されたコーヒーには、価値がつくようになったんです。

これが、スペシャルティコーヒーの考え方です。

では、なぜきゃろっとは「認証」だけでコーヒーを選ばないの?

オーガニック認証とは、土壌から完成品までの製造工程において、有機栽培で作られ、環境への影響を抑えた植物を使った製品であることを証明するための「認証」です。
 
世界各国で、様々なオーガニック認証団体がありますが、それぞれ厳しい基準を設けた商品になります。
 
さて、このオーガニック認証ですが、「品質」や「あじわい」という評価基準はありません。

あくまでも、「有機栽培」かどうかという点の基準となります。
 
そのため、オーガニック認証がついていても、残念ながら品質が良いとは限らないのです。

極端な例ですが、実際に、焙煎士の内倉が訪れた農園でこのようなこともありました。
 
初めてのオーガニック認証の農園への訪問とのことで、胸を弾ませて農園へ。
 
しかし、農園は雑草だらけで、コーヒーの木にも「サビ病」という病気が蔓延していました。ほったらかし状態です。
 
さらに、収穫したチェリーは未成熟のものも多く収穫後のチェリーの果肉を剥くための「パルパー」という機械は、掃除をしていないため、腐敗臭が酷く、非常に汚い。
 
また、チェリーを溜めるタンクやパティオという乾燥場も、とても不衛生でした。
 
この農園のコーヒーをカッピングしても、予想通り、腐敗臭と未成熟豆の味がして品質の良いコーヒーとは呼べません。
 
これが安全性が高いのかどうか…。
体が良いといえるのだろうか…。

内倉は、オーガニックだとしても、このコーヒーは、お客様にご案内したくないと強く思ったと話しています。

お客様は実際に作られる現場を見ることができないからこそ、私たちは責任をもって、「良い」と納得できたものをご紹介したいと改めて強く思ったそうです。
 
スペシャルティコーヒーは「トレーサビリティ」と言って、「いつどこで、誰がどのように作ったか」を明らかにすることを大切にしています。

誰が、どこで、何を、どうやって作ったのか。
トレーサビリティシートを用いて、管理されています。
コスタリカにて

まさに「顔が見える」コーヒーです。
 
私たちが知っている品質の高いコーヒーを生み出している農園は、自分の生産工程について、開示してくれています。
 
また、オーガニック認証は取得していませんが、単純に認証機関を通していないだけで、栽培方法はオーガニックの基準に合致する農園が多いです。

品質の高いコーヒーを作り続けるためには、農薬をたくさん使い続けることはできないからです。
 
化学肥料をやめて有機肥料を工夫して使った、 農薬の使用を制限して自然に影響の少ない形で、病害虫の管理方法を工夫する必要があります。
 
また、収穫後の処理工程においても、腐敗やネガティブな風味を出さないために、衛生的な環境を整える必要があります。
 
品質の良いコーヒー農園は、例外なく設備を衛生的に保っています。

また、自然環境に配慮された栽培を行っています。

化学肥料、農薬を多用してしまうと土が枯れ、良い品質のコーヒーを継続的に育てることができないからです。
 
自然環境に配慮された農園づくりを行うことで土が肥沃になり、周りの生態系に 影響を与えずに栽培が行えます。
 
生物の多様性があることで、その地に住む生物の糞も肥料となります。
 
それでも、オーガニック認証を受けるには、労力や管理費用を考えると難しいということが分かります。
 

私たちが訪問したグアテマラでは…


ドナドおじさんのプラン・デル・グアヤボ農園を訪れた際、農薬について話してくれたことがありました。

ドナドさん
ドナドさん

過去に完全に無農薬で栽培していた時があったんだ。

その時、さび病が蔓延して、ほとんどのコーヒーの木がダメになってしまった。

綺麗なチェリーが実らず、楽しみにしていた方にコーヒーを届けることもできなかったんだ。

自分が大切に育ててきた農園がダメになるって、想像できるかい?

収入がなかったことも苦しかったけど、毎年楽しみにしている方に届けられないことが、本当に悲しかった。

それから、ずっとコーヒーを続けるためにどうしたら良いかと勉強したよ。

環境の事を考えて、今も、基本は農薬は使っていない。むやみに使うと土壌が悪くなってしまうからね。

継いでくれると話している息子の代にも良いコーヒーを作れるようにしなきゃらない。


でも、病気が出た木には、早めに農薬をかけて、他の木に病気が広まらないようにしているよ。

適切に使用して付き合うことが大切だと今は感じているんだ。

今、あなたに話しているように、取引先の方にも、農薬を使用することもあるということを正直に伝えている。

それでも、僕のコーヒーを信頼して買ってくれている人に買ってもらっているんだ。


このように言いながら、「この傾斜じゃ農薬を全部かけるのも大変なんだけどね」と、冗談ぽく笑って話してくれました。
 
農園には、コーヒーチェリーがたわわに実ったコーヒー並木がありました。

このように様々な産地を見てきた結果、高品質なコーヒーは「肥沃な大地で、丁寧な栽培、精製」が必須であることがわかりました。
 
そのため、きゃろっとではオーガニックでも、品質が悪ければ取り扱うことはしません。

品質が悪いということは、たとえオーガニックであっても、どこかの工程で何らかの問題があるからです。
 
ご紹介する農園の全てを見ることができないからこそ、お客様により「安心できるコーヒー」をお届けするには「認証」で選ぶよりも、

「品質」で選んだほうが信頼できると考えています。
 
もちろん、オーガニック認証もこの自然環境の保全という意味でも大きな役割を果たしていると思っています。

きゃろっとでも、品質の高いオーガニックコーヒーも何度もご紹介してきました。
 
ですが、
「オーガニック=美味しい」
「オーガニック=体にいい」
とは、ならない理由をお分かりいただけましたでしょうか。

 
きゃろっとがやみくもに、オーガニックコーヒーを選ばないのは、これが理由です。

お客様に安全性の高い物をご紹介したいからこそ、自分たちで品質を厳しくチェックしています。