コスタリカ・シュマバマイクロミル ゲイシャ
こんにちは!内倉です。
このコーヒーは、僕が最も信頼している生産者のひとり「フランシスコ・メナ」さんが育ててくれた特別なコーヒーです。
メナさんのコーヒーは、きゃろっとでも何度もご紹介させていただいています。
現在、世界中から注目されるコーヒー生産地であるコスタリカですが、その仕組みを作り上げたといっても過言ではない人物、それがメナさんです。
彼の作ったコーヒーは、いつも僕の想像を上回り、まさに「トップスペシャルティー」と呼ぶにふさわしいコーヒーを生産する世界有数の素晴らしいコーヒー生産者です。
今回、その彼が育てた「ゲイシャ種」をご紹介させていただきます。
ゲイシャ種といえば、現在、世界中で最も注目される品種です。
浅野が、コスタリカへ渡航していた際、相変わらず興奮して連絡がきました。
(いつも、美味しいコーヒーを見つけては、昼夜問わず連絡をしてくるのが浅野です(笑))
「大輔君!メナさんのすんごいコーヒーありました!ゲイシャです!注文しちゃいました!」
ご覧の通り、相談ではなく、事後報告メールなのですが、このメールが届き、僕も興奮しました。
いつも、間違いなく美味しく仕上げるメナさんが作ったゲイシャ。
「一体どんな味に作りあげてるんだ」と、現地の浅野を羨ましくさえ思ったほどです。
先日、ようやくこのコーヒーが入港し、僕もカッピングさせてもらいました。
ぶわーっと口に広がる華やかさと爽やかなシトラスのようなアロマ、それでいてナチュラル精製ならではのとろんと溶けるような甘さ。
いや~、参りました。
今回もまた、僕の想像を上回る素晴らしいコーヒーをメナさんは届けてくれました。
現地で実際にカッピングしてきた浅野から、詳しくご紹介させていただきますね。
ここからは、ぼく浅野がご紹介させていただきます!
きゃろっとでは、2016年からコスタリカへ毎年足を運んでいます。
昨年は、コスタリカから5名の生産者が、なんと、北海道にあるきゃろっとへ足を運んでくださり、時間を共にすることもできました。
来てくれた生産者の方には、「もう、僕たちは家族そのもの」という、温かい言葉をかけていただきました。
そんな、繋がりのあるコスタリカ。
その中でも、今回の「シュマバ ゲイシャ」との出会いは、数々のコーヒーとの出会いの中でも特別でした。
いつも、産地訪問の際は、カッピングという方法でコーヒーの評価を行います。
多い時には一日で約60種類、一回の買い付けで150種類を超える数のカッピングをし、その中から、買い付けする銘柄を厳選します。
カッピングをする際、円卓に12種類のコーヒーサンプルがずらっと並びます。
12種類を1セッションとし、一日で数セッションを行っていきます。
生産者や産地の情報は、表示されません。
厳密にルールを決められているわけではないのですが、コーヒーには番号が振られ、1から順に12へと一つずつカッピングをしていくのが基本的な方法です。
このコーヒーと出会った日は、コスタリカの産地訪問最終日でした。
予定にはなかったのですが、急遽カッピングを2セッション行うことになりました。
「次の12種類が今回のラストカッピングとなります。ラストセッションは、生産者の皆さんから、ぜひ、評価してもらいたいという、コーヒーだけが集まっています。希少品種や新しい精製方法による処理を行った特別なコーヒーとなります。」
その言葉通り、今まで会場内は今までとは、明らかに違う、コーヒーらしからぬ香りが漂っていました。
カッピングは、お湯を注いだ4分後から、スタートすることができます。
僕は、必ず12分後からスタートし、コーヒーの細やかな味が取りやすい温度になる時間まで待つようにしています。
タイマーが12分に差し掛かるタイミングで1番のカップの前に立ちました。
「よしっ」
スプーンを差し出したときに、思わず手が止まってしまいました。
1番の左横に並ぶ12番のカップから、ユリやジャスミンのような、エキゾチックな香りが漂ってきました。
1番の前で止まった手は、吸い寄せられるように12番のカップへ。
12番のコーヒーを口に含むと、一瞬、カップテストを行っていることを忘れているかのよう、ただただ味わってしまいました。
はっとした僕は、思わず、声を出してしまいそうになる思いを必死に堪え、急いで評価シート「No.12」に二重丸をしました。
素晴らしいコーヒーが並ぶなか、ひと際、華やかさを放っていたそのコーヒーが、ご紹介するシュマバのゲイシャでした。
かなり希少なコーヒーが並ぶ中でも、飲む前に「普通じゃない」と、分かってしまうほどのただならぬアロマでした。
「これなら、間違いない」
12番のカップを眺めながら、確信しました。
このコーヒーを作った方が、コスタリカコーヒーを引っ張ってきたフランシスコ・メナさんです。
むしろ、世界中のコーヒー生産の現場に、革命を起こした人物といっても過言ではありません。
コスタリカコーヒーの今日の発展の背景には、メナさんが先頭に立って引っ張ってきた「マイクロミル革命」があります。
とっても重要なので、まずはこのマイクロミル革命をご説明いたしますね。
マイクロミル革命とは?
従来、コーヒーは収穫したチェリーを最寄りの「メガミル」と呼ばれる大規模な精製工場に持ち込み、賃金を得ていました。
チェリーは相場で決められるため、生産者の取り分はわずかなものでした。
当時のことを、コスタリカのコーヒー生産者の方は、こう話します。
「どんなに努力して丁寧に作っても、様々なコーヒーと混ぜられてしまう。自分のコーヒーとして世に出ることなんてなかったし、貧しさから抜けられることはなかった。やりがいも感じられなかった。」
しかし、2006年ごろからコーヒーの生産における大きな転換がありました。
チェリーを収穫した後、自分たちの手で生産処理し「国の名前」ではなく、「自分の名前」でコーヒーを作る動きがスタートしたのです。
小さな処理工場で、自分たちでコーヒーを一貫して管理する。
この流れこそ「マイクロミル革命」です。
マイクロミル革命後、この15年で劇的にコスタリカのコーヒーの品質が上がりました。
量は少なくとも、上質で特徴のあるコーヒーを作り出す。
「生産すること」から「創作すること」へ。
このコスタリカのマイクロミル革命は、現在、世界中のコーヒー生産現場へ広がりをみせるようになりました。
大規模農園が主流であったブラジルやコロンビアでさえ、最近はマイクロミルが姿を見せるようになってきたのです。
繰り返しになりますが、このマイクロミル革命の先頭に立ってきたのが、今回ご紹介するコーヒーの生みの親、シュマバ マイクロミルのフランシスコ・メナさんです。
このメナさんから、「壮絶な革命」について、お話を伺うことができました。
実は、普段のメナさんは「革命」という言葉は似つかないほど、とてもフレンドリーでチャーミングな方です。
僕は、コスタリカでメナさんと、同じ席でお食事をする機会に恵まれました。
その食事会で聞いた話が、衝撃的で、今でもはっきりと覚えています。
最初は、本当に大変だったんだ。
コーヒーチェリーは、買いたたかれるものとして当たり前とされていた。大量にさばいてこそ、賃金が手に入ると誰しもが考えていたよ。 働いても働いても生活は楽にならなかったけど、それが、コーヒー生産者だって。
だから、少量のコーヒーでも品質を上げることができれば、高値で売れるなんて誰も信じてくれなかった。できるわけないって、みんなに言われたし、笑われたよ。
それでも私は、絶対にコスタリカコーヒーが世界に認められる品質であると確信していた。美味しいコーヒーを作ることができるのに、評価されない。生産者も自分たちの力を信じられない。
それって、悔しいだろう?
だから、逆風を乗り越えるために、弾丸のように前へ突き進んできたんだ。絶対に変わると信じて。
少しずつ理解してくれる生産者が増えてきたが、大きな組織から力が加わるようなことだってあった。
そんな時には、盾となり、生産者を守らなければならないときもあった。こうして、今があるんだ。今のコスタリカコーヒーがあるんだ。
今や、コスタリカのコーヒーは世界中から注目され、国を支える産業の一つともなっています。
メナさんの言葉からは「自分のため」ではなく、「コスタリカのコーヒー業界」のため、「コスタリカという国」のためという力強い思いが伝わってきました。
「革命」と呼ばれるには、想像を絶するような逆境があったに違いありません。
その結果、コスタリカでは国を挙げて高品質なコーヒーを生産できる仕組み作りまで実現させました。
昨年、きゃろっとに来てくれた若き生産者、エンリケさんもこう話してくれました。
「コーヒー生産者であることを心から誇りに思う。」
数年前まで、コーヒー生産者は決して憧れるような職業ではなかったそうです。
この革命が、多くの若者に夢と誇りを与え、世界中のコーヒーの品質向上に力を与えたことは間違いありません。
ここまで人生をコスタリカコーヒーに捧げてきた方、世界的なムーブメントの立役者こそ、メナさんなのです。
きっと、この先コーヒー史に残る人物である方であると、僕は思っています。
メナさんは2008年に、コスタリカのコーヒー生産者達と生豆輸出業者を発足し、日々、コスタリカのコーヒーの品質向上に力を注いでいます。
コスタリカの買い付けには必ずメナさんが案内をしてくれますが、どこの農園へ行っても、メナさんは「自分の農園を自慢するように」それぞれの農園を話します。
それほど、コスタリカのコーヒーを愛しているのです。
そして、メナさん自身も今も現役で、コーヒーを生産しています。
「赤く熟したチェリーを収穫するってよく聞くだろう?私のチェリーは、紫色なんだ。紫色になるまで、熟したものだけをハンドピックするんだ。だから、私のコーヒーは濃厚で甘いんだ。」
顔をくしゃっとさせて笑いながら話すメナさんの農園には、赤紫色の美しいチェリーが並んでいました。
コスタリカコーヒーの「はじまり」を作ったメナさんのコーヒーとは
今回、ご紹介するコーヒーは「ゲイシャ種」という、現在、スペシャルティコーヒーの中でも最高品質と称されてる希少品種です。
「コーヒーじゃないかと思うほどの衝撃でした」と、お客様からも驚きの声をいただいたほど、素晴らしい透明感と華やかな特徴が出るのが、ゲイシャ種です。
しかし、収量が少なく、非常に生産の難しい品種とされています。
以前より見かける機会が増えたとはいえ、価格は高値がつくのはそのためです。
さらに今回は、より濃厚な甘さとアロマを生み出す「ナチュラル精製」という方法で処理されました。
この精製方法は、管理に失敗すれば、発酵したようなネガティブな味わいが出てしまうリスクもある方法でもあります。
今回のメナさんの届けてくれたこのコーヒーは、素晴らしいカップの綺麗さとフローラルなアロマがあります。
ナチュラル精製でこの品質を生み出すには、気の遠くなるような手間がかかっていることが、品質が物語ります。
飲む前に「間違いなく美味しい」と分かってしまうほどの、ジャスミンやユリのような立ち上る優雅なアロマ。
口に含むと、アールグレイレモンティーのようなフレーバー、ピーチのような華やかさと蜂蜜のような濃厚な甘さが口に広がります。
豆を挽き、お湯を注ぎ、そして、飲み始めから時間をかけて、最後の一滴まで。
その全ての時間が、ゆったりと素晴らしい香りと味わいで楽しめます。
「山はいつでもハッピーなんだよ。都会の忙しすぎるのは苦手なんだ。山でコーヒーを育てて、うまいコーヒーを飲む。これが幸せなんだよなぁ。」
「革命家」という言葉と結びつかないような、お茶目で明るいメナさん。
偉い人ほど、偉そうにしないといいますが、彼もまた、自身の功績を鼻にかけたりは一切しません。
本当に生産者に寄り添い、愛を持ち、駆け抜けてきたことが、彼のお人柄から伺えます。
決して、このコーヒーはデイリー用に飲むのには、安くはありません。
でも、僕は、このメナさんと同じ時代を過ごし、彼の作ったコーヒーを飲めることが、ラッキーで有難いことだと感じています。
そして、きゃろっとのお客様に届けることができることが、本当に嬉しくて仕方がありません。
それくらい、大切な人に飲んでもらいたい。そう、心から思えるコーヒーだからです。
メナさんのコーヒーが、あなたのコーヒーライフを応援してくれると信じて。
皆さまのコーヒータイムが、もっともっと素晴らしいお時間となりますように。