① このコーヒー豆の写真を見て、どう思いますか?
② では、こちらの写真のコーヒーはどうでしょう?
どちらもきゃろっとで取り扱っているコーヒー豆なのですが、見た目は少し異なりますね。
①は大きさがまちまち、②はきれいに粒が揃っているように見えます。
スペシャルティコーヒーの仕組みができる前は、生産国内での基準で「標高」や「豆粒の大きさ」「欠点豆の多さ」で、コーヒーの品質を評価してきました。
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スペシャルティコーヒーの仕組みがなく、見た目だけで判断されていたら、①の評価スコアはあまりよくなさそう見た目ですね。
でもこれは、毎年美味しいコーヒーを届けてくれあの方が作った、きゃろっとでも一番人気のあのコーヒーの生豆です。
今回は、粒の揃い方だけで比較したかなり極端な例ですが、このように見た目で評価する方法は、現在も各国で残っており、それぞれの項目によって、品質を判断しております。
しかし、この評価方法には「味」というベクトルがありません。
この仕組みを変えたのが、スペシャルティコーヒーなんです。
スペシャルティーコーヒーの品質評価と今までの品質評価について
きゃろっとで取り扱うスペシャルティコーヒーは、クリーンカップ(雑味がなく透明感があるか)、甘さ、酸の質、マウスフィール(口当たり)、フレーバー、アフターテイスト(後味)、バランス、オーバーオール(全体の印象)という「味」に焦点を当てた8項目で品質のチェックをし、80点以上のものをスペシャルティコーヒーと評価します。
良いところ、美味しいところを見つけるポジティブチェックですね!
僕が2019年に参加したグアテマラの国際品評会では、このように各項目を点数化し、出品されたコーヒーを評価します。
きゃろっとでも、 同じ国際基準の則った方法でカップテストし、現状では83点以上のコーヒー豆だけを取り扱っています。
このスペシャルティコーヒーの評価には、今までは行っていた「見た目」に関する項目はありません。
そのため、豆が小さくても見た目が悪くても、味としての評価が高く80点以上となれば、スペシャルティコーヒーグレードになります。
そもそも明かな欠点豆がたくさん含まれた見た目の悪いコーヒーは、カップによって味が違ったり、悪い味が出てしまいます。
だから、このようなコーヒーはおのずとスコアが低くなり、スペシャルティコーヒーは品質が高い上に見た目が揃っている豆が多いんですね。
ですが、逆のケースもございます。
その代表的な国であるブラジルでは、厳格にコーヒーのスクリーン(豆のサイズ)で選別されて評価基準を設けられています。
悪いところ、見た目で判断するネガティブチェックです…
下の写真は、ブラジルの鑑定士学校で見せてもらったスクリーン選別をする道具。
これに豆を通して、大きさ別に振るいに掛けることができます。
そのため、たとえコモディティコーヒー(80点未満の一般流通品)であっても、豆の大きさが揃って見た目がきれいなものも存在します。
しかし、スペシャルティコーヒーは、あくまでも「味における品質」が基準となるため、見た目が揃っていても、雑味があったり、甘さがなければ80点に届かず、コモディティコーヒーと判断します。
「見た目」だけを基準にコーヒーを評価してしまうと、「スペシャルティコーヒー」の仕組みが崩れてしまいます。
必ずしも「見た目」=「味」ではないということが、一番大事な点ですね。
この2つをよく表す銘柄を、きゃろっとでも定番品として取り扱っています。
ひとつめは、10年以上に渡って人気No. 1銘柄「グアテマラ・グアヤボ農園」。
一番最初にご覧いただいた①写真のコーヒー豆です。
粒の大きさはバラバラで、大きい豆と小さい豆の差は倍くらいあるものも見られます。
ですが、それ以上にカップテストの評価では、この10年で83点~85点で間違いなくスペシャルティコーヒーです。
みなさまにご支持いただいていることが、何よりの証拠でもありますね。
そして、ふたつめは、ブラジルの銘柄。
(ブラジル・モンテアレグレ農園、ブラジル・セーハ・ダス・トレス・バハスなど)
②写真のコーヒー豆です。
ブラジル国内ではスクリーン評価されていますので、見た目が揃ってとっても綺麗。
麻袋などに“SC16”、“SC18”などと表記されているものもあるのですがが、これが豆の大きさを表し、スクリーン分けされていることが分かります。
どの銘柄もそうですが、当店の焙煎士内倉やスタッフもカップテストを行い、銘柄を決定しているので、見た目だけでなく味も素晴らしいコーヒーなんですね。
「粒にばらつき」があって問題はないの?
近年のコーヒーの発展は目覚ましく、多くのスペシャルティコーヒーは、味だけではなく豆の見た目も揃っています。
スクリーンが揃っていなかったり、見た目の悪いコーヒーは、全国的に少なくなってきていることも実情です。
では、もしばらつきがある場合、どのような問題があるかご説明しますね。
この際の最も大きな問題が、焙煎後のコーヒーの味を悪化です。
スクリーンが揃っておらず、水分活性値と水分率にもばらつきがあると、味に悪影響がでる傾向が強いです。
ですが、逆にこのばらつきによって、焙煎後のコーヒーの味が良くなる場合もございます。
スクリーンが揃っていなくても、 水分活性値や水分率が揃っていれば、味に悪影響がでない傾向が強くなります。
先ほどのグアヤボ農園のコーヒーは、後者ですね。
ここで水分活性値や水分値という難しい言葉が出てきましたが、この値は丁寧に作られてきちんと管理されることで、適正な数値のコーヒーとして仕上げることができます。
先ほどの見た目と一緒で、この値が揃わない豆や適正な値でない豆は、 おのずとスコアが低くなります。このため、スペシャルティコーヒーは水分活性値や水分値が揃った豆が多いんですね。
ただ、スクリーンサイズが違う場合、一粒当たりに加わるカロリー量は、表面積が違うので同じにはなりませんね。
そのため、出来上がりのコーヒー豆は、少しだけ焙煎度の違うコーヒー豆が、混ざっている状態となります。
これは、「煎りムラ」と呼ばれますが、煎りムラも必ずしも悪ではない場合もあります。
水分活性値と水分値が同じで、スクリーンが異なるサイズで焙煎した2つの豆を合わせると、スクリーンを揃えて焙煎した場合よりも立体的で深い味わいのコーヒーになることがあります。
煎りムラは焙煎後の見た目にも影響してしまいますが、きゃろっとの焙煎でそれを行わない理由があります。
実は、煎りムラは低温で長時間の焙煎により、簡単になくすくことができます。
しかし、この焙煎をすると見た目はきれいですが、フレーバーが発達せず、芯が焦げて舌にざらつきの残る味わいとなります。
そのため、当店では煎りムラをなくすための焙煎はしていませんでした。
また、下記の写真のような『貝殻豆』や『ピーベリー』なども、煎りムラの原因となったり、豆の均一性がなくなることで味に影響があると言われています。
でも、これを欠点豆としてハンドピックすることはしていません。
欠点豆とは、味に影響を及ぼす豆のこと。
きゃろっとの焙煎機はどの豆も均一に火を通すことができる仕組み・味作りを行っているので、これを取り除かなくても美味しいコーヒーに仕上げることができるからです。
焙煎や焙煎機のことは、とっても長くなりそうなので後日改めてご紹介しますね。
いずれにしても、当店で取り扱うコーヒー豆の品質基準は、あくまでも「焙煎後のカップクオリティ」に対して、取り扱いを決めています。
難しい言葉もちょこちょこ出てきましたが、なんとなくイメージできましたでしょうか?
最後に
最後に、グアヤボ農園のコーヒーが見た目が悪い代表みたいになってしまったので、ここで弁解させてください。
ごめんなさい、ドナドさん。
実は、グアヤボ農園には、ちょうど1年前に農園を訪問しました。
40年前、崖のような傾斜地に、農園主のドナドさんがおひとりで山を開拓し、コーヒー豆を育て始めた農園です。
2020年現在、74歳となる今も、ご自身で毎日標高1600メートルを超える山を登り、コーヒーの状態を確認されていました。
車一台もあがれないような場所での、スペシャルティレベルのコーヒーの栽培は、絶する苦労があったかと痛感いたしました。
こんな過酷な環境で毎年素晴らしいコーヒーを作っていただいているコーヒーを、見た目だけでは判断してはいけませんよね。
また、僕たちがこのように継続して、みなさまに正しいコーヒー豆の知識をお伝えすることが、ドナドさんのような生産者の方々の期待に応え、コーヒーをお選びいただいている皆様にご満足いただくためのひとつだと思っています。
この記事を書いた人
珈琲きゃろっとの生産管理をしている浅野です。
コーヒー屋だから知っていることやちょっとした豆知識など、みなさまのコーヒータイムにお役立ていただけるような情報をお届けします。
日々のコーヒー実験は、妻のバリスタさーやんと一緒に。仕事場でも自宅でも、いつもコーヒーの話ばかりしているコーヒーオタク夫婦が、きゃろっと的に検証していきます。
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