お客さまから、このようなご質問をいただきました。
『数週間前にカフェインレスを買わせて頂いたのですが、 届いてすぐドリップしても1投目の蒸らしで全く膨らみませんでした。 カフェインレスとはそういうものなのでしょうか?』
結論からいうと、カフェインレスは、通常の銘柄に比べると膨らみません。
きゃろっとでは、焙煎したてのコーヒーをお届けしていますが、焙煎したてでも膨らみは弱いんです。
こちらのお客さまのご注文内容もお調べしたのですが、ご購入いただいたコーヒーは「豆のまま」。
淹れる直前に挽いていて、一緒にご購入した銘柄は膨らんでいるとのことですので、淹れ方には問題ないようです。
それでは、何が原因で膨らまないのでしょうか。
膨らみ比較
【焙煎3日後の膨らみ具合を比較】
焙煎して3日目のものになりますので、当店でご購入のお客さまがお手元に届くころです。
グアヤボ農園のコーヒーがモコモコと膨らむのに対して、カフェインレスはやはり弱いですね。
さらに、焙煎して約1週間後。
【焙煎1週間後の膨らみ具合を比較】
カフェインレスコーヒーの膨らみはより少なくなり、差が広がっているようです。
同じ日に焙煎したものなのに、どうしてこれほどまでに差が出てしまうのでしょうか。
きゃろっと的に、考察してみようと思います。
今回の考察に際して、各商社様にもご協力いただきました。
カフェインレスコーヒーをご紹介していただいているワタル鈴木様。
外部関連会社にまでお問い合わせをしてくれたアタカ通商荒木様。
いつも素早くご回答をいただくゼファーコーヒー橋本様
本当にありがとうございます。
生豆の時点で考えられること
カフェインレスコーヒーは、焙煎前の生豆の状態で、カフェインを抜く処理を行います。
きゃろっとでご紹介しているカフェインレスコーヒーは、 カフェインの水に溶けやすい性質を利用しているマウンテンウォータープロセスという方法を用いたコーヒーなんですよ。
実は、この処理の際、カフェイン以外にもコーヒーのおいしさや香りの素になる成分も一緒に抜けていってしまいます。
でも、ご安心ください。
マウンテンウォータープロセスの特性上、抜けてしまった成分はコーヒー生豆に戻ります。
だから、おいしいんですね~。
ところが、一部の成分は生豆に戻らず、膨らみに影響していることが分かりました。
コーヒーのおいしさや香りの成分、モコモコと膨らむための炭酸ガスになる成分は、コーヒ―生豆に最初から含まれているわけではなく、 焙煎によるさまざまな化学反応によって生まれます。
通常の生豆に比べて、カフェインを除去する際に抜けてしまった素となる成分が少なくなっているので、膨らみが弱い。
つまり、焙煎前の生豆の時点で、すでに膨らむ要素が少ないんです。
焙煎の時点で考えられること
さらに、通常の生豆に比べると、焙煎中の豆の状態にも違いがあります。
カフェインを抜く工程で、長時間水に漬けた生豆は、専用の乾燥機で乾燥します。
その結果、外殻(細胞壁)がとっても脆くなってしまうんですね。
確かに、生豆の様子を見てみると、欠けた豆が多く見られます。
これをさらに焙煎することで、コーヒー豆の細胞壁は大きく損傷してしまいます。
焙煎後の焙煎豆こそ、同じような見た目ですが、目に見えない細胞レベルでは、すでに挽いた後のようになっているということです。
通常の生豆は、焙煎で細胞壁までは破壊されないので、細胞の中に炭酸ガスが含まれます。
これを淹れる直前に挽くことでもこもこと膨らむのですが、焙煎中に細胞壁が壊れてしまうカフェインレスは、焙煎中からどんどん炭酸ガスが抜けてしまい、膨らまなくなるんですね。
焙煎後に考えられること
すでに、焙煎直後から、どんどん炭酸ガスが出ていってしまうカフェインレスコーヒー。
焙煎前から細胞壁が脆く、焙煎中には損傷されてしまうため、炭酸ガスの流出が通常の豆よりも早い段階で起こってしまいます。
なので、動画でもご紹介したように、焙煎したてでも膨らみが弱くなってしまいます。
まとめ
カフェインレスは、通常の銘柄に比べると、膨らみません。
きゃろっとでは、焙煎したてのコーヒーをお届けしていますが、焙煎したてでも膨らみは弱いんです。
繰り返しになりますが、「膨らまない = 美味しくない」とはなりません。
あくまでも、膨らみは鮮度をはかる「目安」となりますので、どうぞご安心くださいね。
この記事を書いた人
珈琲きゃろっとの生産管理をしている浅野です。
コーヒー屋だから知っていることやちょっとした豆知識など、みなさまのコーヒータイムにお役立ていただけるような情報をお届けします。
日々のコーヒー実験は、妻のバリスタさーやんと一緒に。仕事場でも自宅でも、いつもコーヒーの話ばかりしているコーヒーオタク夫婦が、きゃろっと的に検証していきます。
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