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個性的なコーヒーはお好きですか?エチオピア・ナチュラル編

2020年4月にご紹介させていただいた銘柄に、「エチオピア イルガチェフェ G1 ナチュラル ハルスケ」というコーヒーがありましたね。

定番品でも、エチオピア・モカという名称で、通年ナチュラル精製のコーヒーをご用意しています。
 
この「ハルスケ」は、個性的なネーミングの通り、春にふさわしいコーヒーとして、数あるコーヒーの中からセレクトさせて頂きました。
 
毎月の新銘柄を選ぶときには、数種類のコーヒーと一緒にブラインドでカッピングをして、決定しています。
 
今回は、エチオピアばかりを約5種。
どれもエチオピアらしいシトラスフレーバーとクリーンカップでしたが、ハルスケなら一番喜んでいただけると全員一致で決めました。
 
さて、これらのコーヒーの最大の特徴は、「ナチュラル精製」という精製方法にあります。

ナチュラル精製とは?

通常、収穫されたコーヒーチェリーは、大量の水にさらされ、果肉をきれいに落とします。
 
そして、乾燥工程に入り、生豆へと仕上げられます。
 
ですが、このコーヒーは収穫後、果肉が付いたまま乾燥工程に入ります。
 
するとどうでしょうか。

収穫したばかりのコーヒーチェリー
乾燥が進んだコーヒーチェリー

真っ赤だった果肉は、見る見るうちに黒く変色していきます。
 
この工程が、とーっても手間のかかる作業なんです。
 
コーヒーの果肉は、収穫されたらすぐに乾燥棚に並べられるので、たくさんの水分を含んでいます。
 
このため、乾燥中の管理をきちんと行わないと、カビが発生してしまったり、発酵と同時に腐敗してしまいます。
 
こうなると、ネガティブな風味が表れてしまい、コーヒーとしてのスコアが著しく下がってしまい、せっかくのコーヒーが台無しです。

コーヒー生産最先端のコスタリカでは…

コスタリカに行った際にも、ナチュラル精製のコーヒーを乾燥している現場を、いくつも見ることができました。
 
あるマイクロミルでは、体育館ほどの広さのある場所に並べられた乾燥棚に、果肉の付いたコーヒーがびっしりと乾燥されていました。
 
コーヒーからは得も言われぬ香りが漂い、そのコーヒーを男性が、手作業でコーヒーを攪拌しています。

過去にご紹介したことのある銘柄では、まるで「赤ちゃんを優しく撫でるように」愛情を込めて作業に当たります。
 
環境条件や味作りの方向性にもよりますが、頻度の高いところでは、この作業を数十分に一度の間隔で行います。
 
もちろん一日中です。
 
こんなに手間のかかる精製方法を、きちんと管理し丁寧に仕上げると、コーヒーという概念を変えてしまうほど独特な風味のコーヒーになります。
 
こうなると、コーヒー界でもとても人気のあるコーヒーとして、高値で取引されるようになるんですね。
 
特に欧米では、このナチュラル精製のコーヒーが人気です!

では、エチオピアのイルガチェフェ・ナチュラルは…

今回の「エチオピア イルガチェフェ G1 ナチュラル ハルスケ」をはじめ、高品質なナチュラル精製のコーヒーは、コスタリカ同様、丁寧に丁寧に作られたとても貴重なコーヒーです。
 
ですが、この国では生産現場の状況が少し異なります。
 
コスタリカでは、農園で収穫されたコーヒーを、自身の所有するマイクロミルで精製し、コーヒーの生豆として仕上げます。
 
栽培・収穫して終わりではなく、最後まで自分たちで手を掛けることができます。
 
そのため、ひとつのマイクロミルがいくつもの農園を持ち、農園の標高や品種、精製方法によって細かくロット分けすることが可能になりました。
 
ところが、エチオピアでは1ヘクタール以下の小さな農園を持つ農家さんが、それぞれの家庭で収穫したコーヒーチェリーを持ち寄ります。
 
持ち寄る場所は様々ですが、一般的には日本でいう農協のような生産組合に集められ、地区単位や村単位でひとつのコーヒーとして仕上げます。
 
ネーミングにある「ハルスケ」は、エチオピアのゲデオ郡にあるハル地域の、更に小さなスケ村で作られたということを意味します。
 
ここの農家さんたちが、丁寧に育て、完熟したものだけをひとつつひとつ収穫したコーヒーなんですね。

ひとりが手を抜くと、全体の味にも影響してしまうので、エチオピア人の仕事にまじめな人柄があってこその仕組みです。

結局何が言いたいのか

ナチュラル精製で作られたコーヒーはこんなに貴重なのですが、独特な個性ゆえに、どうしても好みが分かれてしまいます。
 
お客様からいただいたメールでも、やはりそういったご感想もいただいております。
 
実は僕も最初は得意ではなかったですし、きゃろっとのほとんどのスタッフも「なにこれ!?コーヒーじゃないみたい!」という感想を持っていました。
 
そう、コーヒーじゃないみたいだからなんです。
 
でも、お好きな味だとしたら、「今までで最高のコーヒー!」と喜んでいただけるコーヒーでもあります。
 
何を隠そう、今月のハルスケの取り扱いを一番喜んでいたのは、最初「コーヒーじゃないみたい」と言っていたスタッフのみんなでした。
 
なので、もし今後もナチュラル精製のコーヒーを飲んた時「おやっ?」と思ったとしても、「これはだめだ!」と決めつけるのではなく、この投稿を思い出していただければと思います。
 
きゃろっとの定期便では、当店にお任せいただく内容でご登録いただいているお客様が9割以上もいらっしゃいます。
 
こんなにたくさんの方に信頼していただきお任せいただけるなんて、とても嬉しいです。
 
その反面、当店にお任せいただいている内容がお口に合わないときは、とても申し訳ない気持ちでもありますが、それもコーヒーの個性としてもお楽しみいただけると嬉しいです。

浅野大地
浅野 大地

この記事を書いた人 
珈琲きゃろっとの生産管理をしている浅野です。
コーヒー屋だから知っていることやちょっとした豆知識など、みなさまのコーヒータイムにお役立ていただけるような情報をお届けします。
日々のコーヒー実験は、妻のバリスタさーやんと一緒に。仕事場でも自宅でも、いつもコーヒーの話ばかりしているコーヒーオタク夫婦が、きゃろっと的に検証していきます。

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