ホントにあのアラジン!?
いつかコーヒーメーカーを開発してみたいと思っていた僕に、届いた一通のメール。 それは、あのトースターで有名なアラジンの方からでした。
アラジンさんのメールには、こう書かれていました。
「きゃろっとさんが推奨している差し湯式のドリップ方法をコーヒーメーカーで再現し、ご自宅で手軽でおいしいコーヒー楽しむことをコンセプトとした新製品を販売予定です。 ぜひご協力いただき、ドリップスピードや濃度などを監修してもらいたいと思っています。」
本当に!?
あのアラジン!?
きゃろっとに声がかかったの!?
きゃろっとの工房内はざわつきます。
もちろん僕自身も、びっくりしました。
しかも、個人的に、アラジンさんは好きなブランドのひとつでした。
ストーブやトースターの品質の良さは知っていましたし、商品にも顧客に対しても堅実なブランドイメージがありました。
今回も、わざわざきゃろっとのような北海道の小さなコーヒー屋に声をかけてくれるくらいなので、相当本気のコーヒーメーカーを作るんだろうなぁと、想像していました。
そして、メールを何度かやり取りして、一度担当の方が兵庫から北海道へ来てくれることになりました。
やらないことを決めておく
きゃろっとのような自家焙煎のコーヒー屋にとっては、とても大きな仕事です。 そして、コーヒーメーカーの開発と言うのは、僕が長年やりたかったことのひとつです。
ですが、きゃろっとで最も大切にしているのは、今コーヒーを買って頂いているお客様。そして、いつも働いてくれているスタッフです。
なので、アラジンさんからの依頼に舞い上がって「なんでもOKでーす!やりまーす!」ってなってしまったら危険なので、お会いするまでの期間、僕は、自分自身の「やらないこと」を整理し、書き出しておきました
- きゃろっとの名前だけを出す監修なら、やる必要はない。
- きゃろっとのことを信頼してくれているお客様を裏切るような仕事ならしない ※納得のできない物を「きゃろっと監修」としたら、きゃろっとのお客様ががっかりするだろうから
- この仕事によって、今働いているスタッフにしわ寄せがいくような結果になりそうであればやらない
- きゃろっとがずっと大切にしてきた人と人との繋がりが見えない仕事はしない
僕は性格的に「いつもと変わらない、心穏やかに過ごす平和な日常」を人生で一番大切にしています。
イベントや旅行に行くよりも、いつも通り工房で仕事したり、奥さんや子供たちと一緒に近所を散歩したり、庭で遊んだりする方がしあわせなんです。
仕事でも、社外の人と会うより、働いている社員やパートさんたちとコミュニケーションをとりながら仕事を進めていくことに喜びを感じる性格です。
つまり、人見知りで、平和主義者で、オタクです。
なので、コーヒーメーカーの開発には、ものすごく魅力を感じるんですが、一方で「有名になりたくない」という想いも強くあります。
なぜなら、僕にとっては有名になってしまうと、平和な日常が脅かされるという恐れがあるためです(笑)
ですから、実は最初にアラジンさんが来てくれた時に「開発の協力はぜひさせて頂きたいのですが、きゃろっとの名前を出さないことは可能でしょうか?」と打診した位です。
※さすがにこれはNGでしたが、露出する際はタレント感は極力出さないように、お願いしました(笑)
そして、最後に、大きなプロジェクトだからこそ、お互いの思いを尊重できる関係性を築けるような相手じゃなければ、この話はお断りしよう。と最初に決めていました。
そして、いよいよ初対面。
アラジンさんからは、企画開発部の二人の男性が来てくれました。
トースター開発の中心人物のお一人でもある高橋さんと、エンジニアで、製品の細かい調整をしていく片山さん。最初は緊張の面持ちでしたが、お二人とも物腰の柔らかな親しみやすい雰囲気でした。
お二人は、来てすぐに、試作機を見せてくれ、丁寧に作られた実験の資料も説明してくれました。
外部の研究所に委託をした「差し湯式」の抽出による、抽出前半と後半の成分分析のデータなども見せてくれました。
「このコーヒーブリュワーで、今までのコーヒーメーカーには無いような、雑味の無いおいしいコーヒーを淹れられるようにしたいんです。
アラジン開発担当の高橋さん、片山さん談
2019年からプロジェクトはスタートしましたが、こうして、実験データを取り、コーヒーブリュワーを形にしていくことは、アラジン社内でもできます。 でも、ここから細かい味づくりをしていくにあたって、コーヒーの専門家の力が必要なんです。
きゃろっとさんのコーヒーを僕たちも飲ませてもらいました。 雑味が無くて、ほんとうにおいしいコーヒーで驚きました。
長年、差し湯式の抽出方法を提案してきた、きゃろっとさんしかいないって思って、今日兵庫から来たんです。」
お二人から、熱い想いが伝わってきました。
とにかく、おいしいコーヒーを抽出できるコーヒーメーカーを作りたい。
その思いは僕と同じだと想い、すごくワクワクしました。
そして、お話を聞いたうえで、僕からもお願いをしました。
きゃろっとの名前を出す以上、名前だけじゃなく、僕も納得できるまで開発に携わらせてもらいたいということ。
よくある店舗の名前を貸しただけの「なんちゃって監修」ではなく がっつり、みっちりと開発に携わらせて欲しいこと。
今回のプロジェクトでは、報酬や製品販売のロイヤルティなどは一切頂かないこと。
※お客様に「きゃろっと、魂売ったな」と思われないように(笑)