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なぜ小さな町のコーヒー屋がここまで支持されるのか?その秘密を探る【第4回】

PR※この記事は2018/10/24にライターの松本隆さんに取材を受け作成していただいたインタビューを転用しています

パート3名の採用枠に100名超が殺到する、北海道の小さな町のコーヒー屋とは?

ブラック企業やホワイト企業という言葉が馴染み、企業は雇用に対して慎重な傾向にある。同時に、採用は人集めの段階で困難を極め、過去類を見ない程人手不足に喘ぐ企業が続出している。

ミシュランに掲載の人気店ですら人手不足による営業を休止している程だ。切実に人が集まらない昨今である。

そんな最中、珈琲きゃろっとには採用を希望する人が急増している。聞けば3人のパート募集に対し100名を超える応募があったとか。募集方法もローカルの無料配布紙の1コマのみ。なぜ、この店には採用の希望者が殺到するのか。

そのカギは一体何なのか。

今回は、その社内風土を生み出す考え方や、働く従業員の満足度について秘密を探っていく。

珈琲きゃろっとの内倉さんに話を伺いました

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■人物紹介
内倉大輔 (株)きゃろっと代表取締役社長
国際的なコーヒー鑑定士であるカッピングジャッジ
Qグレーダーの資格保有
SCAJローストマスターズチャンピオンシップ優勝
(株)Eストアー主催 ネットショップ大賞ドリンク部門1位
エスプレッソチャンピオンシップ1位など数々の受賞歴を持つ

見抜かれる企業風土。採用希望数に顕著に表れる

___採用に関して何か特別な募集PRや広報活動を行ったのでしょうか?

いいえ。ローカルの無料配布紙に1コマ掲載させていただいただけです。ただ、1コマを使ってきゃろっとの雰囲気や具体的な様子が伝わる様に工夫は行いました。とは言え、それ以上は特別な募集PRは行っていません。

___内倉さんが採用の際にポイントにしていることは何ですか?

採用の基準は「前向きで思いやりがあること」それを最も大切にしています。僕は「楽しく仕事をしたい」という理想をもって起業しました。※きゃろっとの理念については第3回記事参照

だから「この人と一緒に仕事をしたい」と思える方を採用します。その為には、キャリアや学歴ではなく「思いやりがあるか」とか「どういった価値観を重視するのか」という部分でマッチングする人を採用する必要があるんですね。

___一緒に働くところをイメージして、楽しく働けそうかどうかが基準ということですね?

そうですね。ですが、どれだけ良いことだけ言っても、素敵な求人を出しても、今の時代すべて見抜かれてしまうと思います。格好をつけて人を集めてもすぐにボロが出る。

だから、できるだけありのままを伝えたいと思っています。同時に一緒に働きたいと言ってくれる方のことも、ありのままを見つめられるようにしたい。採用は「選ぶ」というよりも「マッチング」が大前提だと考えています。

そのため、社員やパートスタッフに関わらず、面接は時間と人員を割き慎重に行います。1日3時間という短時間のパートスタッフの採用であっても、従業員全員を巻き込み「一緒に働きたい」と思える人を採用する。

最終面接には、パートスタッフの面接者一人に対して当社は4人で面接を行うので、応募者には驚かれましたね。採用の勉強はもちろん、コーチングやカウンセリングのスキルも勉強し臨んでいます。

___それだけ採用には力を入れているということですね?

とても大切にしています。先ほど「思いやり」を基準にしているという話をしましたが、それを面接で判断するのはすごく難しいことです。

その人がどんなフィルターを通して世の中を見ているのか。それを見分けるためには、どんなことを聞けば良いのだろうか。そして、どんな質問をしたら、その人のありのままの良さを引き出せるか。

それを面接という限定された時間で見抜かなければなりません。だから、面接の後はいつも遅くまで慎重に会議をします。どの人もすてきで素晴らしいから選べなくなって。

ですが、最終的に大事なのはマッチングです。きゃろっとの価値観と照らし合わせて、お互い気持ちよく働き続けられるかで決めるようにしてます。

___実際、その面接で入社した方は気持ちよく働いているようですか?

少なくとも僕からはそう見えています。みんな楽しそうに仕事をしてくれているので、入ってもらって良かったと思える人しかいないですね。

その甲斐あってか、辞める人がほとんどいません。アルバイトとして働いてくれた学生さんが卒業で退職したくらいです。

きゃろっとで今まで働いてくれた学生は、本当にみんな良い子たちで、自分のやりたいことに目標をもって、希望の就職先に入ることができています。

今でも遊びに来てくれますが、娘が帰ってきたような気持になりますね(笑)

「思いやり」を重視すると、働く人のパフォーマンスが上がる仕組み

___思いやりという言葉が出ましたが、利益最優先ではなく「人を大切にする経営」は実現可能なのでしょうか?

僕は可能だと思っています。というのは思いやりがある人たちばかりの職場であれば、全体のパフォーマンスがあがるからです。

___一般的にみると、キャリアや学歴のようなスキルを優先した方がパフォーマンスが上がるのではありませんか?

確かにスキル重視にした方が、即戦力として考えることができます。けど、それはパフォーマンスが上がるというよりも、会社の業務処理能力が一時的に高まるようなイメージだと思っています。

そうではなくて、もっとその人ならではの個性やポテンシャルを発揮してもらいたいと考えています。立場に関係なくやりたい仕事があればどんどんチャレンジして貰ってOKだし、僕からも色んなことを相談しています。それが結果的にやりがいに繋がっていくと思うんですよね。

___人員=生産能力という考え方だと、働く人はやりがいを見い出しにくいということですね?

一概にそうとは言い切れません。だからこそ企業と働く人のマッチングが重要だと考えています。

ただ、僕はずっと一緒に働ける仲間になりたいと思っています。おじいちゃん、おばあちゃんになっても笑って一緒に働けるのが理想です。だから短期的ではなく、長期的に見たパフォーマンス向上を考えているんです。

___どういうことでしょうか?

例えば「人より2倍能力があるけれど、思いやりのない人」が職場にいるとしますよね。そういう人が自分と他のスタッフとを比較してしまうと、他のスタッフはほとんど働いていないように見えるわけです。

だから、いつもイライラするし他者を攻撃してしまう。でも、人の能力には個人差があります。当たり前です。もしかしたら、攻撃されたスタッフも自分なりに精一杯努力しているのかもしれません。

努力しているのに攻撃されてしまったら、委縮してしまいます。委縮すると「指摘されないように働く」ということが目的になってしまい、主体的に働くことを止めてしまいます。余計なことをして、攻撃されるのは嫌ですから。

___仕事が受け身になってしまいますね

そうなってしまうと、このスタッフの本来の能力は発揮されません。現在、きゃろっとには30人のスタッフがいますが、思いやりのないスタッフの言動で全員のパフォーマンスが3割下がるとします。そうすると、数値的には9人分の生産性が失われてしまいます。

いくら2倍の能力があっても9人分パフォーマンスが下がってしまっては全体としては7人分のマイナスになりますよね。しかも職場の空気はピリピリしていて、楽しい職場とは言えません。

___1人よって雰囲気が全く変わってしまう

でも思いやりがある人っていうのは、人から優しくしてもらったら返してあげることができます。お客様から、嬉しい声を頂いたときや、職場の人に気遣ってもらったり、そういったときに「自分はこの人のために、役に立ちたい」と思えることが、仕事の上で一番のモチベーションだと考えています。

「自分は人の役にたっているんだ」と自覚できること。これは働く上でとても大事なことだと考えています。思いやりがある人は「自分と他人は違うんだ」ということを良い意味で受け入れている人です。

だから「他者同士の比較」とか「自分と周りとの比較」といったバイアスをかけない。つまり、目の前にいる人の、ありのままを見つめることができるんです。そういう人は、人に優しくできるし、してくれたことに対して当たり前に感謝ができます。

そして、感謝されたスタッフにも思いやりがあれば、自分のことを受け入れてくれたことで「自分が役に立っている」ということを実感することができます。

___やりがいにつながる気持ちが生まれる訳ですね。

自分が役に立っていると実感できれば、もっと役に立ちたいと思うようになります。そうすると、本来の自分の能力を超えて、何か新しいものにチャレンジしようと思えたり自分がもっと成長したいと思うようになります。

これは、一緒に働いているひとりのスタッフが証明してくれました。

多様性を受け入れ、安心して個性を発揮できる環境を作る

___先ほどは1人のスタッフからマイナスの影響が出てしまう話を聞きました。次はプラスの影響が出る事例のお話ですね

はい。ものすごく大きなプラスです。入社当初から、一見「雑務」と言われるような仕事に積極的に取り掛かってくれているスタッフがいました。

彼女は、初めてパートスタッフの募集をかけた時に、入社してくれた一番のベテランの一人です。一切先輩面などせず、それどころか重い荷物を運んだり、倉庫の中の整理をしたり、花壇の手入れや掃除にゴミ出しまで。どんなことも嫌な顔を一つせずに、進んでやってくれています。

___一般的には後輩に頼んでしまいそうな仕事ですね

そうですよね。だから、もしかして頼めずに抱え込んでしまっているのではないかと、彼女に「負担になっていませんか?」と聞いたことがあります。すると、彼女は笑顔で答えてくれました。

「負担になんて、思ったことないです。私って、細かい作業もあんまり得意じゃないし、早くもできないから。それなら、細かい仕事は得意なスタッフがやったほうが、全体として効率がいいですよね。

私は、私のできることをやって、みんなが動きやすいほうがいいかなって思って。みんな優しいから、私みたいなスタッフも受け入れてくれて、うれしいですよね」

この話を聞いたとき、衝撃を受けました。社内の仕事は「焙煎」であっても「ゴミ出し」であっても、同じく大切な仕事であると彼女は知っていたんです。そして、採用の基準は間違えていなかったと。改めて実感しました。

___縁の下の力持ちのような存在ですね

実際に、彼女への信頼はとても厚いです。みんな彼女を慕っているし、感謝している。彼女がいるから、いつもきゃろっとの中は穏やかな空気が流れ、心地よい環境が作られている。

そして、彼女だけではなく、今いるスタッフ全員がそんなスタッフなんです。様々な個性を持ったスタッフが「思いやり」の気持ちをもって自分のできることで、全体を動かしてくれている。

一般的な仕事の能力の物差しとしては、この一連の流れの仕事が「早い」か「遅い」か。早ければ能力があると考えられる。でも決してそうではないということを、僕自身もきゃろっとのスタッフから日々学んでいます。

もちろん、一連の流れを誰よりも早く丁寧にできる素晴らしい能力をもったスタッフもいます。先ほど話したスタッフのように、常に全体を見て、サポートに回れる能力をもったスタッフもいる。また、常に「お客様はどう考えるか」という視点をもって、日々改善を考える能力に長けたスタッフもいます。

他にも、すべてのスタッフが毎日気持ちよく働けるように、積極的に色々なスタッフに声をかけている、というスタッフもいます。一見、ただ「おしゃべりが好きな人」と思われるかもしれません。

でも、そのスタッフのおかげで、新しく入ったスタッフもすぐに馴染むことができる。不安なく全員が働く環境が整ってきます。

___それぞれの個性を自主的に発揮していると

「思いやり」と聞くと、とても抽象的な言葉に聞こえるかもしれません。でも、思いやりがあるスタッフばかりが集まると、常に「お客様を」「働く仲間を」「会社を」と、自分で考えながらどんどん動いてくれる。

結果、長い目で見れば会社全体のパフォーマンスは上がるんです。

自らの挫折があったから、より人を大切にできる

___思いやりを大切にする発想はどこから生まれたのでしょうか?

職場というのは、人生の多くの時間を過ごすコミュニティです。どうせなら、そのコミュニティは楽しい方がいい。

いつも職場のみんなが穏やかな気持ちで、自然体で働くことができて何かを我慢することなく、誰かの犠牲の上で働くのでもない。

いいお客様に囲まれて、感謝され、嬉しくなってもっと喜んでもらおうと思える。そういう職場であれば、毎日働きに来るのがワクワクするし楽しいですよね。

___ただ、実践していない会社も多いように思いますが

僕は一度それで挫折を味わったことがあるからです。自信を持って品質の良いコーヒーを焙煎しているのに、お客様に価格競争でしか価値を伝えられない。自分がやりたかったのはこういうことじゃない。そう痛感しました。

起業する前のサラリーマン時代もその矛盾にいつも疑問を持っていました。そしてせっかく自分が経営者になったのに、どうして価格競争にまた身を投じているんだ…と。

もっと自分のなりたい理想を描こう。やりたいことを大事にしよう。それが「人を大切にする経営」でした。

短期的な利益ではなくて、高品質で価値のあるものを適正な価格でお客様へお届けする。買っていただいた僕も嬉しいし、購入されたお客様も満足して喜んでもらえるようなサービスを考える。

仕事に携わる仲間も同じ思いで、お客様に喜んでもらえることで、一緒に嬉しさを共感できる。そんな会社を作りたいと。

僕も嬉しいし、関わった人みんなも嬉しい。それこそが僕が楽しく働くために必要なことだと思ってます。自分なりに考えを突き詰めた時にたどり着いた「関わるすべての人がハッピーである会社」という言葉。

これが僕の理想であり、きゃろっとの理念なんです。それが実現できることを、今一緒に働くスタッフ達が日々証明してくれています。

社員の尾崎さんに話を伺いました

■人物紹介
尾崎一将 (株)きゃろっと 焙煎工房勤務
お客様対応・出荷業務担当

利益ではなく、大好きを伝える事が仕事になっている

___社員としてどんな気持ちで働いていますか?

当たり前ですが社員は雇われている立場です。もちろん僕も。そこでこんなことを言うのはおかしいかもしれませんが、僕はきゃろっとを自分の会社だと思っています。

僕はきゃろっとで働く前、別の会社で仕事をしていました。大きな不満はなかったし、職場環境も悪くなかった。けど、その時は自分の会社とまでは思えていませんでしたね。

それは、会社の規模も影響していると思います。きゃろっとはとても小さな会社です。だから、自分がどんな風に仕事をするかが、ダイレクトに会社に関わるっていう部分は感じています。

けど、それ以上にすごくシンプルなんですが、この会社が好きなんですよね。地域の子供の為に、利益にならないことを率先してやったり。子供以上に、きゃろっとの大人が本気でイベントを行ったりしています(笑)僕自身も、毎年イベントの企画が楽しみで。

その甲斐あって、地元の祭りは年々来場者が増えていますし、地元商店街も活気が出ています。日本中どこの商店街もシャッター街になっていますよね。でも、恵み野ってどこのお店も元気で、本当に愛されている商店街って感じます。

そんな風に人の笑顔の為に一生懸命になれる企業が誇らしいです。だから、これからも未来永劫存続したいと考えるているし、きゃろっとって良いよねって言われたら自分のことのように嬉しいです。

結果、地域の活動をするためにも、利益は必要なので意識はしますが、利益だけを求めることを目的や目標には考えないですね。むしろ、利益だけを優先して、家族やスタッフとの関係を崩すような仕事をしたら、社長は許さないでしょうね。(笑)

____尾崎さんにとって、仕事とはどのようなものですか?また、会社の利益というものをどのように捉えていますか?

仕事は僕にとって、生活の一部です。わかりやすいことだと、コーヒー。僕はきゃろっとに入って、コーヒーが大好きになりました。

それまで僕にとってコーヒーは「苦い飲み物」。けど、それが一変したんです。そこからはもう、のめり込んでます。焙煎や淹れ方にカッピング、味や香りの表現方法も奥が深くて本当に面白い。

究極の言い方をすると、僕はきゃろっとのコーヒーの大ファンです。それを具体化して、お客様に伝えていくことが僕の仕事になっています。

自分が美味しい!大好き!と思うものを家にもって帰って、ワクワクした気持ちで家族に振舞うような感覚ですね。

そんな風に、好きな事に没頭していることが仕事になっている。これは幸せな事です。同時に、お客さまと接する中で、僕以上にきゃろっとのコーヒーに期待を寄せていただいている人がいる事も知っています。

その為に何ができるか。期待にこたえ続けるために何ができるのか。それを考える事は、幸せな時間です。

そして、結果的にそれがお客様の満足度の向上につながり、利益を生み出す活動になっています。なので、僕にとって仕事は暮らしの一部であり、利益は「好き」の延長から生み出されるもという感じでしょうか。

※尾崎さんのインタビューはここまで。この内容を元に再度内倉さんにお話を伺いました。

____尾崎さんはそう話していましたが、いかがですか?

僕も同じ考えなので意思を共感出来ている事がとても嬉しいですね。僕はお客様を増やしたい、という感覚ではないんです。人を採用する時も同じなのですが「仲間を増やしたい」という感覚の方が近いです。

僕が大好きなコーヒーを通して、同じ趣味を持つ仲間が増えたら楽しいですよね。一緒に働くスタッフも共感してくれるから、同じ趣味の仲間にもっとコーヒーの魅力を伝えたい。今よりコーヒータイムを魅力的にするお役に立ちたい。そう考えてくれているんだと思います。

実は、きゃろっとで働いてくれているパートさんは元々お客さまとしてコーヒーを買いに来てくださっていた方も多いんです。 自分がお客さまの立場だった経験から「もっとこうしたら喜んでもらえるんじゃないか」「わたしには難しかったから、わかりやすく改善できないか」など、どんどん意見を言ってくれます。

お客さまの気持ちに寄り添って考えてくれることは、会社としてとても貴重なことです。

パートスタッフの長原さんに話を伺いました

■人物紹介
長原知歩子(株)きゃろっと 焙煎工房勤務
出荷業務・豆詰め、計量担当

働きやすさ。それは、自分の大切な家族との時間を第一に考えられること

___きゃろっとで働くようになって、よりコーヒーが好きになったそうですね?

はい。大好きになりました。もともと、コーヒーは好きだったんですけど、苦手な味のものもあって…。そういうコーヒーに当たってしまうと、本来のコーヒーの味がわからなくなってしまって。「あれ?私、本当はコーヒー嫌いなのかな」って思ってしまうこともありました。

けど、きゃろっとで本当においしいコーヒーというものを知って、あれは酸化した古い豆だったのかも!とか、わかるようになりました。今はコーヒーのおいしさに気付けて凄く楽しいですよ。

___3名の採用枠に100名を超える希望があったそうですね。

そうなんです。

地域のフリーペーパーで募集の内容を見て、私もここで働きたい!と思い応募しました。小さいスペースに、仕事の内容だけじゃなくて、びっしり会社の思いや働いている方のことが書かれていて、正直な会社だな~って感じました。

面接のときに、100人の希望があったと聞いて、本当に驚きました。私だけじゃなくて、周りでもきゃろっとの募集が出るのを待っている人が沢山いたんでしょうね。

入社した今も「募集ない?」って聞かれますね。みんな知ってるんだと思います。ここがすごく働きやすいって。私自身も、ありがたい環境で働かせてもらっていると感じています。

例えば「子連れ出勤がOK」なこと。本当にいいの?と最初は驚きましたが、子育てをする私たちのような主婦にはとても嬉しいです。

子どもたちも、自分から「きゃろっと」に行きたいと言うようになるし、パパとお留守番の日は、私がどんなところで働いているか知っているせいか、安心して待ってくれています。

さらに、子どもが風邪をひいてしまったり、急な用事のときなどは、遠慮なく休ませてもらっています。そうできるように、人員にゆとりを持った環境を作ってくれていることもとても助かっています。

自分自身も休ませてもらっているから、他のスタッフのお子さんが風邪ひいちゃって急に休んでも、全然気にならないです。むしろ、その子のこともよく知っているから「早く良くなるといいな」という気持ちしかないです

それと働く前から、コーヒー好きな友人からは「あそこのコーヒーは本物!」って聞いてました。そんな自慢できるような商品に私も関わりたいっていう憧れで応募しました。

____憧れの職場について、どのような気持ちで働いていますか?

とても、やりがいを感じて仕事をしています。私は、出産し子育てをして長い間務めていなかったので、最初は、ブランクがあり心配していました。

でも、オリエンテーションの時に、こう説明してくれたんです。

子育てをしていた時期はブランクとは、考えないでほしい。子育てほど忙しい仕事はないから、その能力をそのままきゃろっとで発揮してほしいって。家事をする気持ちと同じように働いてくださいね。って。

家で子育てをしていた期間も認められたような気がして、うれしかったです。それに、パートでの仕事って、どうしても言われたことをするというイメージがありました。

___やりがいはどんな時に実感しますか?

日常の業務にあちこちにやりがいを感じています。

パートである私たちには、例えば出荷業務だったり、豆の計量をする業務だったりと、役割分担があります。その役割の中でどんな風に仕事を進めるかは全て任せられているんですよね。

言われた通りにやるんじゃなくて、パートスタッフに一任されていて、自分たちのやりやすいようにやらせてもらえる。

丸投げとか、放ったらかしとは違って、見守ってくれている感じです。

だから、常にパートスタッフ内でもどうしたら良くなるか、みんなで考えながらやっています。自分にはできるかなって不安もありましたが、みんなで協力してやれるから楽しいです。

「パート」であっても平等に大切にしてくれている会社だからこそ、自分から積極的に仕事に関わることができます。だから、とてもやりがいを感じます。

それと、お客さまからも凄く応援してもらって。感想をいただくと私たちスタッフも見れるようになっているんですけど、一体感のような、お客さまと同じ温度できゃろっとを応援できている感じがすごく幸せです。

___ご家族の皆さんは、働く長原さんにどのような反応をしていますか?

家族の皆が、私のこともきゃろっとのことも応援してくれます。緊張してしまって上手に伝えられないかもしれませんが・・・家族も一緒にきゃろっとのことを自分の会社のように感じているような感覚です。

もちろん私も、きゃろっとのことを自分の家のことのように感じていてとても大切に思ってます。家族はとにかく応援してくれています。特に主人は応援団長。我が家で勝手にきゃろっとの今後を討論したりしてます(笑)

私が楽しく働いていることを知っているから、きゃろっとの事についても凄く親身になっていて、とても関心を持っていますね。

家でもコーヒーが楽しみになったみたいで「コロ中淹れて~」とコロンビアの中煎りを飲みたがったりしてます。私の職場がその位身近な存在になっているのは嬉しいですね。

※長原さんのインタビューはここまで。この内容を元に再度内倉さんにお話を伺いました。

____長原さんも凄くやりがいを感じているようですね

良かったです。

実はきゃろっとでは一度火災を起こしてしまったことがあります。設備の老朽化により煙突部より小さな火の粉が天井裏に到達し、断熱材に引火。消防車を呼ぶ火災に発展してしまいました。

幸いけが人はありませんでしたが出荷はストップし、たくさんのお客さまへご迷惑をお掛けしました。そんな時、お客さまから数えきれない応援のメールやお手紙、お見舞いの品もいただきました。

もう、泣かずには見られなかったですね。辛いとかでは全くなくて、ただひたすらにありがたかった。温かさが、本当に嬉しかったんです。

会社とユーザーではなくて、人と人として繋がれていたんだって実感が出来ました。これほど幸せな事ってないです。同時にスタッフは一段と団結力が強まった気がします。

火災直後は、どうなってしまうだろう…という気持ちで目の前が真っ暗になりました。そんな中、スタッフは誰一人として弱音もはかずに、いつも通りの明るさで復旧にあたってくれました。

一丸となって復旧に勤めてくれる姿は、本当に頼もしかったです。スタッフのご家族も手伝いに来てくれて…。感謝してもしきれない思いです。

お客様やスタッフから貰った優しさは、絶対に返したい。そう思っています。僕たちは支えていただいて成り立っています。

だからこそ謙虚に、できる事を精一杯、おいしいコーヒーをご用意する。その想いは、ずっと変わることなく守っていきます。

この企業姿勢に共感する人が続出している。結果それは情報となって伝わり、関わりたい「仲間」が次々に増えているのだ。それこそが採用難のこの時代に希望者が殺到する所以である。

「それでも、僕たちはコーヒー屋です。だから色々なことができるわけではない。だから今日もスタッフ皆で丁寧にコーヒーをご用意して、お届けします」

そう語る内倉さんの周りには楽しそうに働くスタッフの笑顔が溢れていた。とびぬけたスタッフの満足度はこうして生まれている

第5回に続く

■筆者 松本隆
北海道遠軽町出身
食品業界に10年以上勤め退社。
その後、九州・沖縄の水産系の市場、工場や酒蔵を巡り、
福岡、広島、京都、奈良、大阪、新潟と北上。
北海道の食の流通や小売り、飲食店にコンサルタントとして関わる。

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